2018年12月28日金曜日

【「BLOG俳句新空間」100号記念】特集『俳句帖5句選』その7


五島高資

蛇口から水のふくらむ二月かな
朝へ出る道のうねりや竹の秋
五次元の寄せるみぎはや時計草
富士山の艫綱を解く夕焼かな
寝過ごしてひとり降り立つ銀河かな


水岩瞳

戦争に使はれし日々花に問ふ
行方知れずの君は十五のままで朱夏
    無言館
風死せり絵筆の声を今に聴く
少年にアメリカの匂ひ夜のプール
ただ灼けて有刺鉄線続きをり


仙田洋子

煬帝の運河の上をつばくらめ
春闌けて絶滅近き鳥けもの
地図濡れてニュルンベルクの緑雨かな
秋の蝶翅を閉ぢては傾きぬ
冬の川うすぼんやりと日を浮かべ


松下カロ

百人の男うつむく鳥帰る     2017・春興帖
ハンカチに包みそのまま忘れけり 2017・夏興帖
勾玉はゼリービーンズ十三夜   2017・秋興帖
廃駅が鯨の中で燃えてゐる    2017・冬興帖
沈黙は吹雪に似たるチェロソナタ 2017・歳旦帖

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