2022年10月28日金曜日

■ 第29回皐月句会(9月)[速報]

投句〆切9/11 (日) 

選句〆切9/21 (水) 


(5点句以上)

11点句

台風を身内のやうに予報官(仲寒蟬)

【評】 最近すっかりおなじみになった気象庁の予報官と、刻々に告げられる台風情報。彼らの間には、もはや切っても切れない関係にある者同士の奇妙な呼応が働いている、それを身内ととらえたそのことが、この句を(ほんとうは緊張に充ちた問題なのだが、ふと、ほほえましさえ思わせる。この人達にしか、やんちゃ坊主の本性は解らない、とでもいいたそうである。──堀本吟


7点句

コンビニへ敵の集まる無月かな(仲寒蟬)

【評】 敵が集まるのは、無月のコンビニに違いあるまい──真矢ひろみ


大銀河塵のひとつに人類史(真矢ひろみ)

【評】 「大」はなくてもいいのでは、と思いましたが、壮大な句ですね。──仙田洋子

【評】 人類史が塵のひとつだなんて~そう考えると戦争を繰り返す人類があわれそのものです。──水岩瞳


6点句

白桃は遺品のやうに抱くべし(松下カロ)

【評】  白桃と遺品の取合せが意外。──仲寒蟬


鉦叩から鉦叩までの刻(依光陽子)


何会館何会館と秋の雲(平野山斗士)


5点句

墓石の笑つてゐたる秋彼岸(筑紫磐井)


石を蹴る昼の銀河の真ん中に(田中葉月)


(選評若干)

葉書出すハイビスカスの咲かぬうち 3点 渡部有紀子

【評】 えらい! 私の場合は、出さなければと思いつつ、結局は秋も終りとなってしまうのです。──渕上信子


タップする指先遠く星流れ 3点 小沢麻結

【評】 画面をタップして電流が発生した瞬間、遥か遠く一点の星が流れた。指先から宇宙への信号。現代のロマン。──依光陽子


案山子立つ押し倒さるる夢を見て 2点 篠崎央子

【評】 確かに、そんな表情で傾いている案山子、いますねえ。──渕上信子


老いらくの揚羽ふらふら舞う花街かがい 2点 千寿関屋

【評】 「老いらく」は当然老いらくの恋を思わせる。派手な衣装を着た、梅沢富美男のような遊冶郎が年甲斐もなく出かける先が花街なのだろう。──筑紫磐井


磐座を読点にする秋の蝶 3点 山本敏倖

【評】 磐座でしばらく休むということか。洒落た表現。──仲寒蟬


一日の皮膚うすくして桃を剥く 4点 望月士郎

【評】 桃の質感を桃の皮ぐらい薄く敏感な指の皮で捉える。繊細で少し暗いが惹かれてしまう。──中山奈々


川下り待てば寄り来る赤蜻蛉3点内村恭子

【評】 一緒に船を待つかのような赤蜻蛉。穏やかなひととき。秋の澄んだ日差しと心地よい風を感じる。──小沢麻結


ロバの背にゆられ葡萄は崖のぼる 4点 小林かんな

【評】 なぜか和風土を離れてアジア映画を見ている様な気分にさせられる作品。険しい山越えでもたらされる葡萄はどんなに美しくおいしいことだろう。──妹尾健太郎


国旗ふる右手秋刀魚の焼き上がる 1点 飯田冬眞

【評】 日の丸?それともウクライナ国旗?──仲寒蟬


生きものたちに霧の中心の音叉 3点 望月士郎

【評】 生きものたちという表現がやや童話的な甘さがあるものの、「霧の中心」に目をつけられたこと、スピリチュアル的に必要な音の感覚を整える「音叉」を置いたことがよかった。──辻村麻乃

【評】 音合わせのために使う音叉。ラの音階は音の中心となる。生き物たちの発する音は集まればラの音なのかもしれない。音叉のぼんやりとした音から霧が広がっている。──篠崎央子


獺祭忌浮き桟橋の鳴りどおし 2点 千寿関屋

【評】 子規が松山を出た日の光景か。──仲寒蟬


秋晴やビラ絶妙にちんどん屋 3点 小沢麻結

【評】 ビラを撒きながらチンドン屋愉しそう。──仲寒蟬


月見るに余念なき人露の中 2点 依光正樹

【評】 おそらく長い間、一心不乱に月を観察している人なのだろう。その時間と集中力。それらを小さな露の中に見出した詩情と感性。自然と人の切っても切れない関りを思った。──山本敏倖


蝙蝠と夕蟬二百二十日かな 1点 岸本尚毅

【評】 蝙蝠と夕蟬の導入がとてもよい──依光正樹


葛の花陽を目指しては羽こぼす 1点 篠崎央子

【評】 〈羽〉に見立てて雅です。そして〈葛〉の語感。あの極めて卑俗な意味に通ずる響きが、一句の内容に妙味を与えています。イカロスは愚者か勇者か。──平野山斗士

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