2020年9月11日金曜日

【新連載・俳句の新展開】第4回皐月句会(8月)[速報]

投句〆切  8/10 (月)
選句〆切  8/24 (月)

(5点句以上)
8点句

八月の日めくりめくる指の骨(望月士郎)
【評】 骨の一字・一語の評価が・・・?でもその一字で色々なものがクローズアップされてくる。それがこの国の八月、決してアウグストゥスの月ではない! ──夏木久
【評】 孫の顔を一年ぶりに見るのは楽しみだが 小指しか残っていない指で日めくりをめくるのはやりにくくてしょうがねえ あん時は一閃で指の肉が焼きただれて、むき出しになった骨を見たのが此岸での最後の記憶で、、、、 ──真矢ひろみ

6点句
喰はれざるものは腐りて青野かな(仙田洋子)
【評】 青野という清々しい景色の底には、残酷な生き死にがある。獣が食べ残した獣の死骸、訳あって喰われなかった果実などがおぞましい姿を晒す。青草が全ての異臭を消し去り、底に沈めている。人間社会もまた、美しく見えるものの底には、そんな営みが隠されているのだ。 ──篠崎央子
【評】 残飯というより死骸などでしょうか。 ──岸本尚毅
【評】 「喰はれ」なかったものは「腐り」やがて「青野」の大地へと還ってゆく。いのちの循環を「青野」で象徴化させてをり見事。 ──飯田冬眞
【評】 喰われて果てるか腐って果てるか、これが自然の姿。「青野」という季題からは怖ろしいほどの静寂さが、切字「かな」からはある種宗教的な肯定の心が感じられる。 ──依光陽子

円盤の抉るギリシャの夏の空(仙田洋子)
【評】 オリュンピアの神殿を背景に飛ぶ円盤を想起、爽快でした ──佐藤りえ

うつぶせに眠る少年雲の峰(松下カロ)
【評】 どうせなら、ジャニーズのような美少年を思い浮かべたい。 ──仙田洋子
【評】 少年の背中に照らしかけるような雲の峰の白さがよく描かれた ──依光正樹

水打って路地を切り絵の江戸にする(山本敏倖)

梅の酢に記せり二〇二〇年(青木百舌鳥)
【評】 今年は特別。 ──渕上信子

5点句
月餅のやうに犬寝る夏の庭(佐藤りえ)
【評】 月餅は思いのほか重い、見た目よりはるかにずっしりと来る物体だ。しかも円い。そんな月餅の様で寝る犬はずいぶん疲れ果てているにちがいない。直喩の力を用いて、夏の犬らしからぬ寝相をじつに犬らしく描いていると思う。 ──妹尾健太郎
【評】 夜とも限りませんが月餅のために、夜の夏の庭を思わされます。さらに月餅を重く見ると、秋近しという頃合か、暑さに喘ぎながら寝るほかない熱帯夜ではなく。褐色の犬の身が丸く横たわって目立って見えて、存在が存在しているだけで面白いという妙味を湛えています。縞猫が丸く寝ている姿を古代貝に見立ててアンモニャイト乃至ニャンモナイトと呼ぶことがありますがそれに似た趣です。 ──平野山斗士

(選評若干)
学研のおばちゃん夜の薄衣 1点 中村猛虎

【評】 今から60年ほど前、「科学の教室」という雑誌をクラスの理科の担任から買わせられていたことがある。学研は雑誌独自の販売システムを、書店を通さず学校や委託販売をして流通させていた(「学習」もそうだ)。「学研のおばちゃん」は寡聞にして知らないが、有ったかもしれない。などと思い出すと、「学研のおばちゃん」はどことなく色っぽいかんじがしなくもない。 ──筑紫磐井

夏草に濡れて旅路の始まりぬ 4点 飯田冬眞
【評】 始まらざるは東京都民(旅したいのに・・・) ──千寿関屋

踝や秋の蚊の武を刻まれて 1点 平野山斗士
【評】 夏と比べ数が減り、弱々しくなる秋の蚊ですが、その秋の蚊の雌の必死さを、「秋の蚊の武」とたたえたところが面白いです。 ──水岩瞳

ばつた跳ぶ刹那大地を無色とす 4点 篠崎央子
【評】 炎天下の乾ききった大地であろうか。地にいた「ばつた」が跳躍した。「刹那大地は無色」と言い、ならば翅を広げた「ばつた」はつやつやの天然色だろう。躍動する生命を切り出した映像的な句。 ──青木百舌鳥

胎内の記憶の続きソーダ水 2点 中村猛虎
【評】 グラス越しに見えるソーダ水の泡、その存在が胎内にいたころの記憶の続きに感覚される。ソーダ水の具象化により、胎内の羊水まで想起され、俳句はイメージを実践している。 ──山本敏倖

フェニックス一樹残暑に慊らず 1点 平野山斗士
【評】 フェニックスの木が残暑を貪っていると解しました。 ──岸本尚毅

烏瓜の花を靴履く猫の声 1点 夏木久
【評】 烏瓜の花のような靴を履いてぼーっと歩いてゆくと、長靴を履いた猫が来て声をかけてきました。助詞の使い方ひとつで奇妙なニュアンスを出すことのできることを示す作例なのでした。 ──望月士郎

麗しきディスタンス(距離)にて汗を拭 く3点 筑紫磐井
【評】 特選。「麗しき」が良い。 ──渕上信子


老人の興味は老婆月の道 1点 岸本尚毅
【評】 改めて「老人」とは何歳以上なのかを調べました。 ──渕上信子

風が吹く付箋のやうに外寝人 4点 依光陽子
【評】  説明はうまくできませんが、付箋という比喩はとても新鮮です。 ──小林かんな

海遠し今宵もナツノマスク干す 2点 小林かんな
【評】 アベノマスクを連想。 ──岸本尚毅

ゆふがたのマスク外せば秋めいて 3点 依光正樹
【評】 実感の句と思います ──小沢麻結
【評】 連句の中の一句のような、切れのない作りですが、実感があります。 ──渕上信子
【評】 時事句として解しました。「不本意な心地よさ」を感じます。

コロナ禍や焼肉たんと夏痩せなど 1点 水岩瞳
【評】 「たん」は牛タンではなく、鬼城の「たんと食うてよい子孕みね草の餅」の「たんと」と解しました。 ──岸本尚毅

物かげに生死のさかひ原爆忌 3点 北川美美
【評】 原爆の恐ろしさは、75年経ても変わりません。核兵器の廃絶は、日本人の願いです。 ──松代忠

青トマトやがて血となる鬱にもなる 3点 真矢ひろみ
【評】 この句には、唐突な転換がある。「青トマト」という青臭く未熟な故に新鮮なたべものが、熟すと真っ赤になり身体を活かす「血」なるかと楽しんでいたら、この生のイメージが一転精神の鬱状態へ持ち込まれる、健康の象徴が血の色がネガティブな色合いを帯びてくる。この場面の強力な視点の転移に、韜晦を感じる。今回感心した一句です。 ──堀本吟

あふむけに泳ぐ地球を背負ひつつ 2点 水岩瞳
【評】 「あふむけに泳ぐ」背泳ぎの人の接点は確かに地球。壮大なスケールに気づくのは俳句だからだろうか。 ──北川美美
【評】 大胆な切り取り ──中村猛虎






 

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