2013年6月21日金曜日

『二十四節気論争』(追加)/筑紫磐井

『二十四節気論争』(筑紫磐井編二五年一月刊)の「四.参考資料(二)二十四節気見直し問題の経緯」に、一月以降の二十四節気見直し問題の経緯を追加としてまとめた。

(☆は日本気象協会の活動、★は俳人の活動、○はジャーナリズムの反応。()内は編者が発表文などから要旨をまとめたもの)

☆二〇一三年四月二五日日本気象協会が「新しい季節のことば」を発表

日本気象協会が「新しい季節のことば」を発表した。「季節のことば 選考委員会」(日本版二十四節気専門委員会を改称)により「季節のことば36選」(各月三つの予定であったが、じっさいは七月はしぼりきれず四つのため37)を選定したもの。
(選考委員会委員は、委員長新田尚(元気象庁長官)、安達功(時事通信編集局長)、石井和子(元TBSアナウンサー,日本気象予報士会顧問)、岡田芳朗氏(暦の会会長)、梶原しげる(フリーアナウンサー,東京成徳大学応用心理学部客員教授)、片山真人(国立天文台暦計算室長)、長谷川櫂(東海大学文学部文芸創作学科特任教授,朝日俳壇選者)、山口仲美(明治大学国際日本学部教授))。

【春】

三月 ひな祭り、なごり雪、おぼろ月
四月 入学式、花吹雪、春眠
五月 風薫る、鯉のぼり、卯の花

【夏】

六月 あじさい、梅雨、蛍舞う
七月 蝉しぐれ、ひまわり、入道雲、夏休み
八月 原爆忌(広島と長崎)、流れ星、朝顔

【秋】

九月 いわし雲、虫の声、お月見
十月 紅葉前線、秋祭り、冬支度
十一月 木枯らし1号、七五三、時雨

【冬】

十二月 冬将軍、クリスマス、除夜の鐘
一月 初詣、寒稽古、雪おろし
二月 節分、バレンタインデー、春一番

【経緯】この発表に当たっての経緯で、日本気象協会は、「今回の取り組みは、二十四節気を変えるものではありません。取り組み開始当初、「新しい季節のことば」には“日本版 二十四節気”とキャッチフレーズがついていたため、「従来からの二十四節気を否定する、変更しようとしている」というとらえられ方をされて取り組み自体に反対意見も多くでました。誤解を避けるため、取り組みを進める中で当初のキャッチフレーズは封印し、「季節を感じることば」を応募する方々の自由な感覚で記載していただきました。」とあり、「季節のことば選考委員会では、一年のめぐりを二十四の言葉で表現している「二十四節気」のひとこと解説もつくりました。伝統ある二十四節気はこれからも親しんでいきたい“季節のことば”の一つです。」と述べている。以下にその解説を掲げる。(従来の解説と大幅に異なるところもあるので、参考までに、角川文庫『俳句歳時記(第4版)』の解説を[]内に掲げた)

二月

 立春(りっしゅん)春の生まれるころ[角川・暦の上ではこの日から春になる]
雨水(うすい)春の雨が降りはじめる[角川・降る雪が雨に変わり、積もった雪や氷が解けて水となるとの意]

三月 

啓蟄(けいちつ) 地中の虫が目覚める[角川・暖かくなってきて、冬眠していた蟻・地虫・蛇・蛙などが穴を出るころ]
春分(しゅんぶん)春のなかば[角川・昼夜の時間がほぼ等しくなる日]

四月

 清明(せいめい) 麗か[角川・清浄明潔を略したものといわれ、万物が溌剌としている意]
穀雨 (こくう)穀物が芽吹くころ[角川・穀物を育てる雨という意]

五月

 立夏(りっか)夏の生まれるころ[角川・暦の上ではこの日から夏が始まる]
小満(しょうまん) 若葉の輝くころ[角川・万物がしだいに長じて満つるの意]

六月

 芒種(ぼうしゅ) 麦の熟れるころ[角川・禾(のぎ)のある穀物を播く時期の意]
夏至(げし)昼がいちばん長いころ[角川・一年中で昼が最も長い]

七月

 小暑(しょうしょ)暑さが厳しくなる
大暑(たいしょ) 暑さ極まるころ

八月

 立秋(りっしゅう)秋の生まれるころ[角川・暦の上ではこの日から秋に入る]
処暑(しょしょ)暑さが衰える[角川・処は収まるの意]

九月 

白露(はくろ)露が白々と結ぶ[露が凝って白くなるの意]
秋分(しゅうぶん)秋のなかば[角川・昼夜の時間がほぼ等しくなる日]

十月

 寒露(かんろ)肌寒さを覚える[角川・露が寒さで凝って霜になるの意]
霜降(そうこう)早霜[角川・霜が初めておりる意]

十一月

立冬(りっとう)冬の生まれるころ[角川・暦の上ではこの日から冬に入る]
小雪(しょうせつ)初雪

十二月

大雪(たいせつ)雪が降る[角川・小雪に対して、雪が多い意]
冬至(とうじ)昼がいちばん短いころ[角川・一年中で昼が最も短い]

一月

 小寒(しょうかん)寒さが厳しくなる[角川・寒の入りの日]
大寒(だいかん)寒さ極まるころ[角川・一年で最も気温が低い時期]


○朝日新聞四月二八日/「卯の花・蝉しぐれ…季節のことば36選 気象協会が発表」
(「季節のことば36選」を紹介し、今後はテレビの天気予報などでおなじみになりそうだという。なお二七日の「天声人語」でも一言紹介があり、賛否を交えて話題を呼びそうと書いている。)

★「俳壇年鑑」(五月刊)/筑紫磐井「伝統の見直し」(巻頭言)
(一年間の回顧記事の中で、日本気象協会の二十四節気の見直し、新しい季節のことばの募集の状況を報告する(執筆段階では新しい季節のことばはまだ未発表)。)

★「俳句」六月号/櫂未知子「現代俳句時評6 季語は誰が決めるのか」
(季語の話題の中で、日本気象協会の二十四節気の見直しに触れ、気象協会が民間団体であること、募集した季節のことばに著作権を設けようとしていること、などを批判する(執筆段階では新しい季節のことばはまだ未発表)。)

★「俳壇」七月号/筑紫磐井「季節のことば37?選」(俳壇時評)
(「季節のことば36選」が決まったことを紹介し、問題点を四つ紹介する。また、この問題に暦の会会長岡田芳朗氏の責任が重いことを指摘する。)


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