●三協会の現状
俳壇の主要な協会は三つある。現代俳句協会、俳人協会、日本伝統俳句協会である。それぞれの毎年の活動は『俳句年鑑』に紹介されているが、三つの協会の直接の比較はこれではよくわからない。ここでは、その現況を設立年順に述べてみよう。まず会員数から。
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現代俳句協会は、平成14年九二九九人(過去最高)であったが、以後三~四年で千人を減少させるトレンドが続いている(22~28年は七年)。令和2年で四六八三人となっており、近い将来四千人台を割る危険性も高い。
俳人協会は、創設以来会員数は増大を続け、平成20年までは、三~四年ごとに千人の増加が続いていた。しかし、平成21年以降の十二年間は一万五千人台に横這っており、特に令和2年は二六九人の減となっており危機意識が強い。
日本伝統俳句協会は、創設時の三千六百人から会員数は減少する一方であり、現在は二千五百人程度で、危機状況にあると言われる(大久保白村副会長談)。
だからこのようなトレンドは、、俳壇人口全体の趨勢と考えられるのである。前回述べたようにコロナ後の俳句関係の諸協会の状況は事業が縮小しているから黒字化は続くが、それでは魅力がないから会員は減少する。結果的には、悪循環でいずれ協会事業そのものが縮小減退しかねない。
協会が行っている事業はおおむね類似している。賞の授与などの顕彰、大会・句会の開催、講座の実施、図書や紀要の刊行、図書の収集と閲覧機会の提供、機関誌の刊行などである。しかし出版社や自治体が行うものよりはきめが細かく、私も重宝するものがあった。ニーズがある以上ぜひ進めてほしい。
●中高年俳人の入会促進
さてこのように協会員が減少しているのだから、協会はいろいろな場で入会を促進した方がいい。特に中高年俳人への対応は不可欠だ(例えば現俳の97・6%は中高年)。以下では、特に現俳と俳人協会の二つについて考えさせていただこう。
俳人協会は会員数一万五千人の天井を打ってから危機意識を高め、同人雑誌・無季俳句をあえて排除しない方針に転換している。前衛無季の同人誌にも推薦の依頼が二~三年前から来ている。原理を曲げてでも会員増強を図るというアグレッシブな姿勢が俳人協会にはあるようである。
その意味では、両協会へ入会することもいいのではないかと思う。最後の選択は入会してから選べばいいのだ。ただこのためには、両協会の活動を客観的に比較できるデータが整備されることが必要で、それを踏まえて、会員が合理的な判断をすればいい。協会員であっても、現在、両協会の違いを的確に把握しているかやや疑問だからである。
結局は協会への帰属を決めるのは、会員がそれぞれの協会からどれだけサービスを得られるかの合理的判断による。逆に協会としては、会員を引き付けるサービス提供が必要で、ことによると協会同士のサービス合戦となるかもしれない。しかしそれは会員が喜ぶことである。(例えば忠誠心がないと出世できないとすれば、それだけでハンディとなる)
すでに前号で述べたように、印刷媒体を使った機関誌活動は現俳が俳人協会に対して優勢であるが、会員においてどれほどそれを自覚しているか、かつそれを有効活用した戦術がとられているか、やや疑問である。
また現代俳句協会が若手会員増加に伴い青年部の諸活動が顕著であるが、これにならって俳人協会も改革実行委員会(小澤實委員長)において令和3年度より組織としての「若手部」を設置(部長はまだ不明)し、オンライン句会、ネット句会などの勉強会も開く予定だという。これもいいことだ。
こんなことを言うのは、大久保白村氏の提言を読んだからである。氏は、日本伝統俳句協会が敵を研究せず、己を過信して会員数に危機的状況をもたらした、この際、日本伝統俳句協会と俳人協会に同時在籍する会員に「俳人協会の魅力」を書かせたらいいというのである(「沖ゆくらくだ」二〇二〇年一〇月号)。誠に至言である。
(中略)
●協会への入り方
最後になるが、協会への入り方がわからないという人も多い。こういうコラムでいうのは不適切かもしれないが、ニーズがあれば答えるのもコラム担当者の仕事だろう。入会したい人がいれば、筑紫が運営する雑誌「俳句新空間」(会費無料。一般会員には雑誌無料送付)に参加して頂ければ好きな協会に推薦させていただく。
〇俳人協会:推薦枠をもっている。入会金二万円と年会費八千円。
〇現代俳句協会:推薦人になる。入会金五千円と年会費一万円。ただし私の雑誌は現俳の支援団体となって助成金が出るので入会金を新規入会者に還付する方針である。
※詳しくは「俳句四季」8月号をお読み下さい。
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