1968年静岡県生れ。2018年現代俳句新人賞、19年攝津幸彦記念賞準賞を受賞し、活躍盛りを迎えられた。
ぴったりの箱が見つかる麦の秋
涙痕のざらざらとして白鳥座
句集名となった一句目。物体にぴったりする箱が見つかった時の嬉しさは格別。二句目とも、下五が効いている。
縁日のひよこに戻りたい三日月
アスパラガス愛にわたしだけの目盛り
ヒヨコがピヨピヨ歩いているうちに形を変え、色はそのまま三日月になってしまったとは、アニメーション化してみたい。二句目、私も目盛りが人とは異なるなと納得。
手術着がすうすう台風直撃中
ぺちぺちと歩くペンギン梅雨明ける
塗り薬の円を広げて秋惜しむ
納得以上に、こういう感覚は私も覚えていたので、私が作りたかったと思い、ほれぼれと作者に嫉妬してしまう。
森はふとひかがみ濡らし楸邨忌
荒星やことば活字になり窮屈
言葉が活字になって窮屈とは、楸邨も諾うだろう。しかし、なつはづきさんの俳句の言葉は、活字になっても伸び伸びしている。今の作者に俳句がぴったりの箱だから。
(「岳」2020年12月号より転載。転載にあたり、漢数字を算用数字に書き換えました。)
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