2020年12月25日金曜日

【なつはづき第一句集『ぴったりの箱』を読みたい】8 『ぴったりの箱』を読む  小林貴子

  1968年静岡県生れ。2018年現代俳句新人賞、19年攝津幸彦記念賞準賞を受賞し、活躍盛りを迎えられた。

 ぴったりの箱が見つかる麦の秋
 涙痕のざらざらとして白鳥座


 句集名となった一句目。物体にぴったりする箱が見つかった時の嬉しさは格別。二句目とも、下五が効いている。

 縁日のひよこに戻りたい三日月
 アスパラガス愛にわたしだけの目盛り


 ヒヨコがピヨピヨ歩いているうちに形を変え、色はそのまま三日月になってしまったとは、アニメーション化してみたい。二句目、私も目盛りが人とは異なるなと納得。

 手術着がすうすう台風直撃中
 ぺちぺちと歩くペンギン梅雨明ける
 塗り薬の円を広げて秋惜しむ


 納得以上に、こういう感覚は私も覚えていたので、私が作りたかったと思い、ほれぼれと作者に嫉妬してしまう。

 森はふとひかがみ濡らし楸邨忌
 荒星やことば活字になり窮屈


 言葉が活字になって窮屈とは、楸邨も諾うだろう。しかし、なつはづきさんの俳句の言葉は、活字になっても伸び伸びしている。今の作者に俳句がぴったりの箱だから。

(「岳」2020年12月号より転載。転載にあたり、漢数字を算用数字に書き換えました。)

0 件のコメント:

コメントを投稿