2020年7月24日金曜日

【抜粋】〈俳句四季8月号〉俳壇観測211 25年で俳壇の人気はどう変わるか――芭蕉も蕪村も、子規も虚子も、秋桜子も誓子も、龍太も澄雄も遠くなる  筑紫磐井

●平成末年の人気ベストテン俳人
(中略)
 平成を控えて、「俳句界」が29年12月に「平成俳句検証」として、俳人一七五名に「平成を代表する俳人」を回答させていることだ。まさに平成俳人の人気ベストテンを示している。平成を代表する俳人は次のとおりである(氏名は物故者)。

【トップ9】

金子兜太(25票)②宇多喜代子(10票)②鷹羽狩行④田中裕明(6票)⑤有馬朗人(5票)⑤関悦史⑤高野ムツオ⑧稲畑汀子(4票)⑧正木ゆう子
【トップ10~29】
⑩池田澄子(3票)⑩茨木和生⑩今瀬剛一⑩大峯あきら⑩櫂未知子⑩片山由美子⑩岸本尚毅⑩安井浩司⑱飯田龍太(2票)⑱鍵和田柚子⑱神野紗希⑱後藤比奈夫攝津幸彦⑱津川絵理子⑱鴇田智哉⑱中原道夫⑱夏井いつき⑱夏石番矢⑱波多野爽波⑱深見けん二

●平成初期の人気ベストテン俳人
 さて、いまさらながらの人気ベストテンを探し出したのは、今から25年前にはやたらとベストテンが盛んだったからだ。当時「結社の時代」と言われ、結社の代表である主宰者の格付けが行われていた。総合誌でもこれを競わせていた。角川書店「俳句」平成4年11月号では平成4年度人気俳人アンケートを発表している。なんと読者から一六八一通もの回答があり、そのアンケートを集計したものである。その前年の平成3年にも行っている(( )内に前年度結果を示す)。当時の俳壇からすると至極納得できる顔ぶれだ(ここでは氏名は現在存命中の人を示す)。

【トップ10】
①飯田龍太(①)②森澄雄(②)③能村登四郎(③)④加藤楸邨(④)⑤鷹羽狩行(⑤)⑥角川春樹(⑪)⑦阿波野青畝(⑥)⑧藤田湘子(㉒)⑨金子兜太(⑬)⑩岡本眸(⑩)
【トップ11~20】
稲畑汀子(⑰)⑫桂信子(―)⑬上田五千石(⑨)⑭鈴木真砂女(⑲)⑮石田波郷(⑦)⑯細見綾子(㉔)⑰山口誓子(⑫)⑱石原八束(㉑)⑲高濱虚子(⑭)⑳清崎敏郎(―)
【トップ21~30】
有馬朗人(⑳)㉒草間時彦(―)㉓黒田杏子(㉘)㉔森田峠(㉚)㉕飯田蛇笏(⑧)㉖与謝蕪村(㉕)㉗沢木欣一(⑱)㉘松尾芭蕉(⑮)㉙中村苑子(―)㉚星野麥丘人(―)[番外]水原秋櫻子(⑯)
     *
 25年がたつと、俳人の人気はどのようになるのであろうか。本論副題に上げた著名な作家から眺めてみよう。芭蕉・蕪村はすでに古典の世界の人であるが、25年前にはそれでも人気作家に上がっていたことはちょっと驚く。子規は全くの番外であったが、虚子も25年前は低位であり、現在は全く人気がない。秋桜子も誓子も25年前から凋落の傾向がはっきりし始めた。龍太・澄雄は25年前には絶頂期にあったが、現在では龍太も低位にあえぎ、澄雄は無回答である。新興俳句系の作家は、特集した総合誌の傾向から言っても殆ど上がってこない、特に俳人協会に移籍した三鬼・不死男・静塔らは誰も名を上げていないようだ。草田男も、4Tもいない。
 これに引き換え、兜太、狩行、朗人、汀子、比奈夫は25年をかけて次第次第に人気をあげてきている。つまり俳人とは、長生きをし、活動を不断に続けることこそが大事だということなのだ。死んでしまってはお話にもならないのである。
  (後略)
※詳しくは「俳句四季」8月号をお読み下さい。

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