鬼やんま
串を打つ鮎のぬめりに負けながら
パパイアの花優しくも炎暑なる
夏の果ホワイトボードを字の辷り
気を付けと休めの間鬼やんま
夏が逝く赤き実赤き毒を持ち
・・・
ある句会で席題に「ハゼ」が出た。聞いた時に「鯊」か「櫨」か? と一瞬迷った。もっとも櫨は櫨の実とか櫨紅葉とか言わないと秋の季語にはならないのだが。
そこで音のことがふと気になった。
ゴンズイという魚がいる。ゴンズイという木がある。魚は権瑞、木は権萃と書く。魚の方は鰭に毒があることで知られているが、木の方はどんなことで知られているのだろう。秋、赤い実(莢)が裂けて中から真黒の種が見えるととても綺麗だけれど……。
サワラという魚がいる。サワラという木がある。これは鰆、椹と書き、どちらも有名である。椹はヒノキ科であって、檜によく似ている。私は未だに椹と檜の違いがよく解らない。何度か調べてみたのだけれど、実際に木の前に立つと「これってどっち?」となってしまう。
ちゃんと調べればこんな例は色々あるのだろう。
同音の話ではないが、チョウトンボという蜻蛉がいる。これがまたややこしい。漢字なら蝶蜻蛉と書かれる昆虫である。姿を知っていれば何ということもないが、字だけを見ると、特に俳句にした場合には「蝶・蜻蛉」と取られてしまうことも多々。吟行先で見かけたりすると、出会いの嬉しさもあって詠んでみたくなるものでもあるが。
そういえば、今年この蜻蛉にまだ会っていない。とにかく残暑の厳しさに怖気づいてしまって、なかなか家から踏み出す元気が出ないのである。
我が家から一番近くで見られる所というと、吹田市の万博記念公園になる。ここの蓮池には夏から秋にかけてよく見られる。翅、特に後翅の幅が広くて、飛び方もひらひら~という感じである。青というか瑠璃色というか、美しい翅をしている。
いつだったか山中の池でこの蜻蛉が沢山飛んでいるのを見かけたことがあった。水面にはびっしりの菱、これを菱畳というのだろうなと思いながら眺めた。目を凝らすと白い小さな花が咲いていた。その上をこの蝶蜻蛉たちが沢山飛んでいたのだった。壮観だった。
やっぱり飛び回る蝶蜻蛉を見たい! 九月が終わらぬ内に万博記念公園まで行ってみよう。
(2023・9)