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(デザイン/レイアウト:小津夜景)
夢の成層とその破壊 小津夜景
両切りの腋のおぼろがぎやらくしい
ばらばらの娯楽雑誌やみづぬるむ
ネーブルにまきびしのある運河かな
春や鳴る夜汽車シリングシリングと
硝子ごと手びさしに染むよもぎいろ
ひこばえを真闇につかむ院ならむ
むつつりと欠く指を食む早蕨は
ふりかへりこのまぶしさは芹の山
天文台やがて巣箱は冷ゆるなり
鳥の恋カプセルホテルより帰還
ふと破壊衝動を抑へられなくなつて相殺十歌
(1)けむりから怪しき宇宙生まれもうことばなど真にうけないことだ
(2)ねころんで、と、打ち込んで猫論を掘り出す午後のなんてうららか
(3)無神論?それでいいわとまきびしは千鳥のやうねと思ひつつ笑む
(4)踏まれざる処女地を明日も恋ふだらう足裏の谷のたとへば枯野
(5)惑星の光の底をさまよへば胸にはびこるムカシヨモギが
(6)もうすぐモノが騒ぎ出す モノもまたイッヒ・ロマン故に死んでゐる
(7)この指は音叉でせうか音叉とは抱きあへない木霊のやうな
(8)ふりかへりこのまぶしさはかつて書き言葉と名指された白い山
(9)オマージュがイマージュとなり鳥となり人類の手を離れてゆきぬ
(10)キース・ムーンと春の岬をジャンプする追ひつくやうに遠い寝言に
【略歴】
- 小津夜景(おづ・やけい)
1973生れ。無所属。
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