2014年3月7日金曜日

【俳句作品】 平成二十六年 春興帖 第一







     仙田洋子
鳥雲に第五福竜丸残し
   東日本大震災
春の海上履きのまま流されしか
ケンタッキーおじさん手持ち無沙汰春

     曾根 毅(「LOTUS」同人)
春昼や甲冑の肘見当たらず
水に棲むものの集まる日永かな
梅香る枝の先まで言葉めき

     中村猛虎(1961年兵庫県生まれ。「姫路風羅堂第12世」現代俳句協会会員。)
首抜けて雛に精子の飛びにけり
清明の刑務所の土柔らかく
春の闇深き所に死の匂い
輪ゴム跡手首に残る春の宵
良き漢は皆人のもの桜貝
桃缶や地球と繋がる足の裏
朧より折り鶴を出す人の妻

     栗山 心(「都市」同人)
初午や祠の鍵は針金ぞ
戒名に華といふ文字涅槃寺
剃刀の産毛滑らすかの子の忌

     月野ぽぽな(「海程」同人)
立春の枝を大きく蹴って鳥
この星の銃口の数冴え返る
体より腕おもたき春の雷

     網野月を(「水明」「面」「鳥羽谷」所属・「Haiquology」代表)
二筋の飾り包丁蒸鰈
「蒸鰈」酒より句作に浸る日々
蒸鰈俳句談義がしらけても
けり付けて俳句にしても蒸鰈
美骨かなサインコサイン蒸鰈
蒸鰈焼けばぼやける水平線

     山田露結(「銀化」)
椿咲き継ぐやうに人咲き継いで
冴えかへる地球が青いことなんて
未来さておき菜の花のからし和へ

     福永法弘(「天為」同人、「石童庵」庵主、俳人協会理事)
初午や肉のスエヒロ倒産す
春しぐれ海老の背腸を抜きをれば
花菜漬酔ゐにまされる幸などなし


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