【俳句新空間参加の皆様への告知】

【ピックアップ】

2014年3月21日金曜日

【小津夜景作品 No.16 】 夢の成層とその破壊   小津夜景

※画像をクリックすると大きくなります。

(デザイン/レイアウト:小津夜景)






          夢の成層とその破壊   小津夜景

両切りの腋のおぼろがぎやらくしい

ばらばらの娯楽雑誌やみづぬるむ

ネーブルにまきびしのある運河かな

春や鳴る夜汽車シリングシリングと

硝子ごと手びさしに染むよもぎいろ

ひこばえを真闇につかむ院ならむ

むつつりと欠く指を食む早蕨は

ふりかへりこのまぶしさは芹の山

天文台やがて巣箱は冷ゆるなり

鳥の恋カプセルホテルより帰還


            ふと破壊衝動を抑へられなくなつて相殺十歌
(1)けむりから怪しき宇宙生まれもうことばなど真にうけないことだ
(2)ねころんで、と、打ち込んで猫論を掘り出す午後のなんてうららか
(3)無神論?それでいいわとまきびしは千鳥のやうねと思ひつつ笑む
(4)踏まれざる処女地を明日も恋ふだらう足裏の谷のたとへば枯野
(5)惑星の光の底をさまよへば胸にはびこるムカシヨモギが
(6)もうすぐモノが騒ぎ出す モノもまたイッヒ・ロマン故に死んでゐる
(7)この指は音叉でせうか音叉とは抱きあへない木霊のやうな
(8)ふりかへりこのまぶしさはかつて書き言葉と名指された白い山
(9)オマージュがイマージュとなり鳥となり人類の手を離れてゆきぬ
(10)キース・ムーンと春の岬をジャンプする追ひつくやうに遠い寝言に






【略歴】
  • 小津夜景(おづ・やけい)

     1973生れ。無所属。





0 件のコメント:

コメントを投稿