「紅の挽歌」を読ませていただきました
奥様のことは少しお聞きしておりましたが
句集の巻頭から 看病され送られたときの壮絶さは
命を失うことの苦しさなどがひしひしと伝わって
参りました
自分が選した句を見ておりますと
「母」の句を多く選んでいたことに気づきました
また、
手鏡を通り抜けたる螢の火
月天心胎児は逆さまに眠る
ハムスター回り続ける寒夜かな
の世界観、好きです
ありがとうございました
(篠 主宰 辻村麻乃)
中村猛虎句集『紅の挽歌』 感銘句
「モノローグ~永いお別れ」より
白息を見続けている告知かな
余命だとおととい来やがれ新走
厚岸の秋刀魚喰らいて昏睡す
鏡台にウィッグ遺る暮の秋
新盆や萬年筆の重くなる
「遠い日の憧憬」より
少年の何処を切っても草いきれ
手鏡を通り抜けたる螢の火
月天心胎児は逆さまに眠る
スプーンの曲線眠くなる小春
朧夜の肩より生まれ出る胎児
「家族の欠片」より
卵子まで泳ぎ着けない十二月
腕時計外せば飛べる春の空
母の日の大丈夫大丈夫大丈夫
ハムスター回り続ける寒夜かな
「左手の記憶」より
布団より生まれ布団に死んでいく
母の日の母に花まる書いてもらう
息吸わば吐かねばならぬ桜桃忌
死にたての君に手向けの西瓜切る
「さよならの残骸」
水紋の前へ前へと水馬
白玉を詰め込む母の口の中
「前世の遺言」より
致死量のシャワーを浴びている女
独り居の部屋を西日に明け渡す
女から紐の出ていて曼珠沙華
ポケットに妻の骨あり春の虹
2021年1月29日金曜日
【中村猛虎第一句集『紅の挽歌』を読みたい】8 中村猛虎「紅の挽歌」を読んで 辻村麻乃(『篠』主宰)
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