「紅の挽歌」を読ませていただきました
奥様のことは少しお聞きしておりましたが
句集の巻頭から 看病され送られたときの壮絶さは
命を失うことの苦しさなどがひしひしと伝わって
参りました
自分が選した句を見ておりますと
「母」の句を多く選んでいたことに気づきました
また、
手鏡を通り抜けたる螢の火
月天心胎児は逆さまに眠る
ハムスター回り続ける寒夜かな
の世界観、好きです
ありがとうございました
(篠 主宰 辻村麻乃)
中村猛虎句集『紅の挽歌』 感銘句
「モノローグ~永いお別れ」より
白息を見続けている告知かな
余命だとおととい来やがれ新走
厚岸の秋刀魚喰らいて昏睡す
鏡台にウィッグ遺る暮の秋
新盆や萬年筆の重くなる
「遠い日の憧憬」より
少年の何処を切っても草いきれ
手鏡を通り抜けたる螢の火
月天心胎児は逆さまに眠る
スプーンの曲線眠くなる小春
朧夜の肩より生まれ出る胎児
「家族の欠片」より
卵子まで泳ぎ着けない十二月
腕時計外せば飛べる春の空
母の日の大丈夫大丈夫大丈夫
ハムスター回り続ける寒夜かな
「左手の記憶」より
布団より生まれ布団に死んでいく
母の日の母に花まる書いてもらう
息吸わば吐かねばならぬ桜桃忌
死にたての君に手向けの西瓜切る
「さよならの残骸」
水紋の前へ前へと水馬
白玉を詰め込む母の口の中
「前世の遺言」より
致死量のシャワーを浴びている女
独り居の部屋を西日に明け渡す
女から紐の出ていて曼珠沙華
ポケットに妻の骨あり春の虹
0 件のコメント:
コメントを投稿