2013年7月26日金曜日

【俳句作品】 平成二十五年 夏興帖 第二


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        もてきまり(「らん」同人)
此岸覗く爪先立ちの百合二本
危険思想の匂ふがごとく白牡丹
神妙に水母となつて抗へり

        早瀬恵子( 「豈」 同人 )
あさなぐさ七ツ下りの雨の後朝
柿葺落の音吐朗々涼しかり
大暑かな肩をだしたり勘亭流

        月野ぽぽな(「海程」同人)
恥ずかしくなった孑孒から沈む
日焼止めほのかに匂い少女たち
冷房の闇まだ覚めている鱗

        陽 美保子(「泉」同人)
水門を全開にして夏つばめ
青胡桃神父が空を読みにけり
就中子規画鶉図秋隣

        山田耕司(「円錐」同人)
襟足に見覚えのある欅かな
胃は耳につながらざるも麩まんぢゆう
信仰やいやいやをしてせんぷうき

        前北かおる(「夏潮」)
ナイターの熱気へ通ずゲートかな
ナイターの暗闇ぎはの芝生席
ナイターのゆつくり落つるホームラン

        網野月を(「水明」同人)
伸ばす首滝壺に嘆息する我鬼忌
甘露忌やグラデーションの青海波
天面し真似る声色瓢箪忌

       堀田季何(「澤」「吟遊」「中部短歌」)
黒鷺と黒き白鷺愛しあふ
灼熱の海も羅馬に至る道
商人の手中肉塊ほどの雹
交換すパイナップルと爆弾と
につぽんの半島になるいつの夏
老人の隊列瀑(たき)へ一直線
干葡萄(レーズン)にあらず糞(まり)より興る蝿

        柴田千晶(「街」)
トンネルと同じ長さの夏の夢
一坪のスナック「ほたる」花ダチュラ
天牛の貌透谷に似てきたる

        仙田洋子
 愛しきものへ 三句
白南風や風切羽を形見とす
虹の輪をくぐりに逝つてしまひしか
炎天の遥かを昇りゆく鳥よ

うすものや日ごとに吾子とへだたりて
虹二重てふてふらには遠すぎる



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