2014年5月9日金曜日

【竹岡一郎作品 No.14】 疲労の歌2   竹岡一郎

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          疲労の歌2   竹岡一郎


日本刀陳列室のはるうれひ裸女まどろみて唇ひらく観

諸人のマリアたらむと海女宣ればいそぎんちやくの音無き拍手

蕩児らが赫と厨を囲みゐてこの子兎の為に死なむか

陰饐えて祈る手のごと掲げらる回り舞台にトパーズ・不能者

医学部に父子二代献体せむと父笑めりわが袴着の折

ふるさとの風葬の坂急なれどすずしく過ぐる一輪車のひと

歌姫の最期縊死とも墜死とも降らみ降らずみ珠・髪・異言

青玉の蟬に残りし赤土を妃の悲恋凝りしと喰へり

真鍮の筒に水銀充たすべし握り締めれば月球はじけ

兵士来て焦げしピアノに指置けり忽ち放つ悍馬百頭

舐め嚙みて啄み銜え耀はせむ鱗・汝が呪詛・砂降る屋上

コルシカの香油一滴肋骨へ拭はば旅の支度整ふ



【作者紹介】

  • 竹岡一郎(たけおか・いちろう)

昭和38年8月生れ。平成4年、俳句結社「鷹」入会。平成5年、鷹エッセイ賞。平成7年、鷹新人賞。同年、鷹同人。平成19年、鷹俳句賞。
平成21年、鷹月光集同人。著書 句集「蜂の巣マシンガン」(平成23年9月、ふらんす堂)。

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