2014年5月23日金曜日

【俳句新空間No.1を読む】  『俳句新空間No.1』を読む(転載)/陽美保子


良き人と書いてあるなり鳴雪忌    西村麒麟
(『俳句新空間』No.1)

 鳴雪忌は、内藤鳴雪の忌日で二月二十日。鳴雪の俳句は、〈初冬の竹緑なり詩仙堂〉、〈只頼む湯婆一つの寒さかな〉くらいは知っているが、それほど人口に膾炙しているというわけでもない。子規に俳句を学んだというが、俳句より江戸俳諧の研究の方が知られている。どんな人だったのだろうと調べてみると、「良き人」と書いてある。その単純明快な記述が、いかにも温厚実直な人柄を思わせて好ましい。この言葉を、これまた素直に受け取った作者のお人柄も一句に滲み出ていて、思わず顔がほころぶ。

水鉄砲最新式でありにけり      麒麟

 最新式とはどんな仕掛けのある水鉄砲なのだろうと想像が膨らむ。また、その水鉄砲にやられて、「参った、参った」と言っているお父さんなども想像され、楽しい一句である。まったく説明しないことにより、読者の想像力が刺激され、一句が大きくなる好例だ。

 〈雑に蒔く事の楽しき花の種〉〈鉄斎の春の屏風に住み着かん〉〈いただけるならもう少し冬休〉など自在。

 (以上「泉」5月号より転載)

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