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この洞窟(ガマ)も口を塞がれ蝉しぐれ
沖縄には多くの洞窟(ガマ)があり、戦争中は避難場所や日本軍の陣地あるいは野戦病院として利用されたと聞く。その中で発見されないまま、特定されないまま遺骨として眠っておられる方も多いだろう。 「口を塞がれ」という表現に、蹂躙され、奪い去られ、押し付けられ、見捨てられた人たちの痛切な叫びがなおも押さえ込まれようとしている現実を思う。
壕中を燈す鉄砲百合の悲鳴
この句の悲鳴もまた塞がれようとしているのではと戦慄する。 今を生き、いっしんに鳴きつづける蝉たちの命の音がかなしいほどに降り注ぐ。
最後の章「地球のリレー」には、こんな文章がある。
地球上の生きものすべてや
死者でさえ繋がり合って
地球のリレーを織り成す
命のリレーを繋げて行きたいという氏の強い祈りのようにも感じられる。それは決して塞がれるようなことがあってはならない。