2024年9月13日金曜日

英国Haiku便り[in Japan](48) 小野裕三


 インターナショナル俳句デー


 四月十七日は何の日? そう訊ねられて即答できる日本の俳人はおそらくいないだろう。正解は、「インターナショナル俳句デー(International Haiku Day)」。「世界俳句の日」といった感じか。

 僕もこの存在に気づいたのはつい最近だ。Facebookで外国人の俳人たちとのつながりが増えてきて、彼らの投稿をつらつらと見ていると、「インターナショナル俳句デー、おめでとう」みたいな投稿を四月にいくつか見かけた。それなりにコメント欄も盛り上がり、イベントの類も開かれているように見えた。

 そこで調べてみると、このインターナショナル俳句デーは、決して歴史が古いものでもない。二〇〇七年に、サリ・グランドスタッフという米国の女性が「ナショナル俳句デー」、つまり「米国民の俳句の日」を提唱した。二〇一二年には「俳句ファウンデーション」という団体がそれを引き継ぎ発展させて今に至る。その過程でもともと二月だった時期が四月に変更され、かつ「ナショナル」が「インターナショナル」に変わった。それがその日が誕生した経緯だ。

 それにしても、なぜ四月十七日なのか。芭蕉関連の何かの記念日、もしくは西洋に俳句が紹介された何かの記念日、と推測したが、その推測は見事に外れた。四月は、その月が米国での「詩の月間」だから、という単純な理由。そして、十七日は、俳句が十七音である、というその数字に準えたもの。

 その経緯からは、米国由来と思えなくもない「インターナショナル俳句デー」だが、僕が会員になっている英国俳句協会でもしっかり盛り上がっていたので、米国以外でもそれなりの認知があるようだ。他にもカナダ、豪州、欧州諸国にも広がっている様子である。

 提唱団体とも言える「俳句ファウンデーション」では、その日に合わせて俳句コンテストや集会なども呼びかける。ユニークなのは、ネット上での連句的なイベントや、さらには俳句を組み込んだ動画関連のイベントもあることだ。「俳句ライフ映画祭」と銘打った企画では、一句を十七秒で紹介してそれを十七句分繰り返す、という基本フォーマットで動画を作ることを呼びかける。計五分弱の長さの俳句動画ができるというわけだ。他にも「ビデオ俳画」という呼称で作られたものや、現代アート的な趣きの動画もあって、とにかくその多彩さやユニークさ、そして熱気には驚く他ない。

 これまで、英語俳句の世界はまるで日本の俳句に対するパラレルワールドのように存在し、そしてひょっとすると日本の俳句よりも新しいことに野心的で実験精神がある、とうすうす感じてきたが、「インターナショナル俳句デー」を目にしてまさにその感を強くした。

※写真は英国俳句協会ウェブサイトより

(『海原』2023年10月号より転載)