投句〆切 11/11 (水)
選句〆切 11/21 (土)
(5点句以上)
10点句
絶版といふも冬めくもののうち(水岩瞳)
【評】 或る本を求めていて絶版と知ったときの無念さは忘れられない。その時の気分が「冬めく」という季語の持つ気分とまことによく通じ合っている。 ──仲寒蟬
【評】 文庫本でも油断していると絶版ということもある。句集や歌集であればいっそう身近である。──依光正樹
8点句
長き夜の次のページに象歩む(望月士郎)
【評】 先日、孫と動物園に行った。その日も、その夜も、次の日も、孫の話には像とキリンが出てくる。当分この子の脳の頁に像が歩いているのだろう・・・?──夏木久
7点句
まづ石を持つて出てくる冬の蟻(渡部有紀子)
【評】 そうかも。なんとなく納得します。 ──渕上信子
6点句
猫消えし枯野に痒き一所あり(篠崎央子)
【評】 眺めていたら早くも尾の先までも草叢に没し、後を追ってみたいが既に叶わず。されば眼で追うほか無いので、ちょうど今はあの辺に居るかなそれともあの辺に居るかなと勘を働かしているうち、風で動くのか猫で動くのか判然しないがどうも、動く所がある。痒いと皮膚感覚を以て心理を陳べた点に小膝を打ちます。あたかも猫一発で戴かされちまったようで悔しいですが特選にて戴きました。 ──平野山斗士
【評】 ふと見かけた猫か、飼っていた猫か、いずれにせよその猫がいなくなった枯野。そして枯野に一所痒いと感覚される所がある。痒いの擬人化が、この場合消えた猫とドラマ的相乗効果を発揮し、詩的に功を奏した。 ──山本敏倖
5点句
大綿を連れて新聞回収人(飯田冬眞)
【評】 大綿がふわりとついて来ること冬の道で覚えがあります。大綿が新聞紙の塵のようで面白いと思いました。 ──小沢麻結
(選評若干)
残る虫とは斯く乱れ斯く乱し 3点 青木百舌鳥
【評】 盛りの時期を過ぎて衰えた声で鳴いている虫ですが、その虫がこのように乱れ、このように乱していると言っているのが、面白いです。人間にも当てはまるような~選挙で負けたトランプ大統領の今でしょうか。 ──水岩瞳
靴ずれの靴を許せず冬木立 4点 なつはづき
【評】 実感です。今でこそ履きやすい靴しか履かなくなりましたけど、若かりし頃などデザイン重視で靴選びなどしていて靴ずれの痛かったこと。誰に当たることも出来ず一人取り残された感覚が良く表現されて、冬木立が効いていますね。 ──田中葉月
【評】 靴ずれの靴に逆切れする輩が60歳前後の男性に多く、コンビニ、電車内等でも傍若無人のクレイマーぶりをよく見かける。孤立無援の誇り高き自尊と単なる痴呆の間、紙一重のところを綱渡る。 ──真矢ひろみ
【評】 靴ずれをするような靴を買ったのは自分で、靴ずれをするような歩き方をしたのも自分なのに、許せない。立ち止まって、冬木立に寄りかかりながら、具合を確かめる。ひどい。これは残るタイプの靴ずれだ。このままか歩くか思案する。と、いつか冬木立になってしまうんじゃないだろうか。 ──中山奈々
河豚ちりや生きるとは的な話もし 3点 渕上信子
【評】 この句、中八がまったく気にならない。それどころか、「生きるとは」の後に少しの間(「なんちゃって」感を含んで)を挟んだ後の「的な」の三拍が、三連符のように素早くタタタと妙に軽快なのだ。ちょっと腹の出た中年のオッサンが目に浮かぶのは「河豚ちり」という季題の文字効果だろう。この鍋は大人数で囲む鍋ではない。普段はしないような話もしつつ、一対一でちびちび突く鍋だ。 ──依光陽子
蒲団干すことも鳥語の丘の街 4点 平野山斗士
【評】 かつて森を開いた丘陵のニュータウンに、少しだけ住んでいたことがあります。言われてみれば、古い住人は鳥語を使っていたように記憶します。 ──望月士郎
保全林人なく木の実降りしきる 2点 佐藤りえ
【評】 先日、木の実に降られて感動したので。 ──千寿関屋
竈猫今度は後ろ足を上げ 3点 西村麒麟
【評】 横着な動き。 ──岸本尚毅
【評】 情景が見えてユーモアたっぷり。 ──松代忠博
【評】 退屈なんでしょうね。もうすぐ春よ。 ──渕上信子
大根の永久の白さや入歯は金 2点 北川美美
【評】 大根の白さは眩しい。でもそれを食べる歯が金歯なのがとっても可笑しく、微笑ましい。歯も永遠に白いと思っていた時代が懐かしい。 ──篠崎央子
【評】 入れ歯は永遠ではないのか。研究者に聞いてみたところ、金という物質はビッグバーンの時発生して以来、永遠に残り続けているものだとか。大根の永遠の白は感傷に過ぎないかもしれない。 ──筑紫磐井
猿山の猿見下ろして松手入れ 2点 篠崎央子
【評】 人間界も見下ろして。 ──仙田洋子
【評】 公園の高みの松でしょう。 ──岸本尚毅
純白の卵が十個雁渡る 3点 松下カロ
【評】 地上には白い卵い十個、器に盛られているのか卓上にオブジェのように一列に並んでいる。かたやはるかを行く列、またはひとかたまりの動くモノ。一瞬、ネガとポジの逆転を見る。静止と移行のすがた。対比が絵画的。
俳句的に統合すれば、卓上に真っ白な卵十個、窓外頭上に帰る雁の列。この簡潔な二句一章の取り合わせの妙をしばし味わう。
ニンゲンの統合能力のみが、卵と黒い飛行物を「鳥」のカテゴリーに入れ、また「俳句」という詩の囲いの中で系統づけることができている。 ──堀本吟
鮟鱇鍋火星に海のあるそうな 4点 真矢ひろみ
【評】 水を使わずアンコウのもつ水分のみで煮るという鍋、混沌とした様子が火星っぽかったのかな、と思いました。 ──佐藤りえ
がうがうと宙飛ぶ夜風神の旅 2点 小沢麻結
【評】 出雲へ向かう神々の中にはプライベートジェットみたいなのでぶっ飛ばす者もいるのだろう。ソラ飛ぶ、今の何?風神? ──妹尾健太郎
【評】 ひときわ風の強い晩に、家の外の風音を気にしているのでしょう。やがて、ごうごうと音を立てているその風が、まるで宙を飛んで出雲へ向かう八百万の神のように思われてきたのです。「宙飛ぶ夜風」という措辞が空想と現実とを無理なくつないでいて、共感できました。 ──前北かおる
寒卵食ふ隠居後のコロンブス 1点 仲寒蟬
【評】 特選。嗚呼、この句大好き。 ──渕上信子
秋の山鳥のむくろを捨てにゆ く1点 仙田洋子
【評】 死んでしまった飼鳥を埋める場所をさがし、秋の山をゆく。秋山の冷えて澄んだ大気の透明感と、鳥を亡くした悲しさや喪失感が重なる。「捨てにゆく」という感情を廃した語が効いている。 ──青木百舌鳥
ついてくる猫さへをらず酉の市 3点 飯田冬眞
【評】 寂しげな酉の市。 ──岸本尚毅
やっぱり|冷(つべ)たい小春日の石のベンチ 2点 妹尾健太郎
【評】 思わず「つべたい」と口に出る。 ──岸本尚毅
犬に陽や柊の蕾のゆるみ 2点 中山奈々
【評】 何気ない日常の景に惹かれました。 ──北川美美
どこでもドア開け故郷の鰯雲 3点 中村猛虎
【評】 ドラえもん的ななつかしさ。 ──岸本尚毅
2020年12月11日金曜日
【新連載・俳句の新展開】第7回皐月句会(11月)[速報]
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