2023年6月30日金曜日

第36回皐月句会(4月)[速報]

投句〆切 4/11 (火) 

選句〆切 4/21 (金) 


(5点句以上)

9点句

乱れとぶ蝶よその先墓ばかり(飯田冬眞)

【評】 無垢な蝶と静寂の墓原の取り合せが見事です。行く先を暗示しているようにも感じられ、大人ははしゃぐものじゃないと記した文章をふと思い起こしました。──小沢麻結


入学式ちりめんじゃこの中に蛸(望月士郎)

【評】 厳密い言えば季重なりだがちりめんじゃこの方はイメージだから主たる季語は「入学式」。子供の頃ちりめんじゃこの中からゾエアや蛸、海老の子供を見つけるのが楽しみだった。入学式のガキどもを見ていて一人蛸がいるじゃん、と思ったのだ。──仲寒蟬

【評】 ひときわ体格のいい生徒か、異彩を放っていたのか。──佐藤りえ

【評】 蛸に注目、爆笑 ある詩人が詩の定義として「時折本物のカエルが中にいる想像の庭」(不正確かも)としたのを思い出しました──真矢ひろみ


発声のはじまり蝌蚪の池に泡(近江文代)

【評】 科学的に言えばそんなことはなかろうが、この捉え方はユニークで面白い。──仲寒蟬

【評】 言い得て妙。──堀本吟

【評】 この泡は「あ」だと思う。──依光陽子


6点句

利き耳を水平にする竹の秋(山本敏倖)

【評】 水平が効いていて面白い。竹林はどうやっても広がっていくので、その存在感も感じることができる。──辻村麻乃


春眠の浜まで着けてくれる舟(妹尾健太郎)

【評】夢といわずにうつらうつらしている状況を表していて好感。──依光正樹


5点句

花ふぶく柩の舟がつぎつぎに(依光陽子)


(選評若干)

妻だけが味方で手下啄木忌 2点 水岩瞳

【評】 「手下」が効いていますね。作者はこれで救われている。──渕上信子


最初から花びら枕詞はダダ 2点 山本敏倖

【評】 前衛中の前衛はダダではないかと思う。そのほかのアバンギャルドは偽前衛かもしれない。平畑静塔は、季語は雪月花があればよいと言っていたが、これは不徹底だ。詩歌には花があればよい。花びらとダダ、日本詩歌全集など不要である。──筑紫磐井


亀鳴くや大絶滅のいくたびも 3点 仙田洋子

【評】 君はもう絶滅している!(ケンシロウ)──筑紫磐井


背表紙の照り朧夜の稀覯本  2点 堀本吟

【評】 朧夜なんだけれども背表紙が光って見える。この朧夜なんだけれども背表紙が光って見える。この稀覯本は金箔などをふんだんに使ってあるのだろうか。──仲寒蟬


3分の春宵ラーメンと一曲の旅 1点 夏木久

【評】 カップ麺ができるまでの3分は長い。ちょうど一曲分の長さ。春宵を眺めながら聞いたのでしょう。旅先の春宵を味わうことのできた貴重な3分間だったのだと思います。──篠崎央子


息継ぎのできぬ少年花菜畑 1点 中村猛虎

【評】 山室暮鳥の詩のような「いちめんのなのはな」に溺れそうな少年の頭が見える。──仲寒蟬


瓦礫とかシベリヤとかも暖かい 2点 堀本吟

【評】 俳句の社会性に改めて思いを馳せました──真矢ひろみ


地を這つて哀しき竜や涅槃寺 4点 西村麒麟

【評】 この涅槃寺は何処其処にある固有の寺名ではなく涅槃会を行っている遍く寺だろう。──妹尾健太郎

【評】 イモリヤモリトカゲの季語性を避けるための表現かしらん、と邪推するにしてもその結果として、味わいが出ています。涅槃図に猫が描かれないように爬虫類も描かれないでしょう。──平野山斗士


食ふ?と聞く花見の団子食ふと言ふ 3点 岸本尚毅

【評】 ごく自然な二人の関係が伺えて好きな句です。──渕上信子

【評】 人を食った句だ。虚子の「初蝶来」のように会話を取り入れながらこちらはずっと砕けて、かつ内容がない。この阿呆らしさがいい。──仲寒蟬


春眠や涎たふとし老僧の 2点 仲寒蟬

【評】 こういうのが大好き!「の」止めなんていうのはゾクゾクする。──筑紫磐井


子を産めばやがて大きく春の月 3点 依光正樹

【評】 この季節の月は大きく見える。(あまりきちんと確認したことは無いが)、この句の場合は、産まれた後に「春の月」が大きくなっている。出産のことを「月満ちて」ということと、子供の成長をかぶせているのかも知れないし、無事母となってやっと平常心が戻り、産褥から眺めた「月」、今までになく身に替えて大きく感じたのかもしれない。産むという大事業と「春の月」の取り合わせ方が、ユニークで巧みだ。──堀本吟


涅槃西風ちょっと隣に行ってきます 1点 田中葉月

【評】 隣がいろいろにイメージされ、一句に物語性を呼び込む。ちょっとの気安さが、逆に季語涅槃西風を際立たせ、この隣はこの世の隣かも知れない。──山本敏倖