●豈 40号 2005年3月
無音の河
目次では俳句作品となっているが、実際は詩作品。長文が同時掲載され、安井浩司論ともなっている。
●豈 44号 2007年3月
ブナの森へ
あかつきの凍てる街路や修羅に会う
こわれゆくなと妻抱えしは銃後の街
夢見ふゆことば・言葉余白消す
鳴る鈴の鈴の音木立暮れはじむ
コーヒーと本と駅舎と桜道
青き海ちるさくら手にこころざし 心
白波と白き砂地の桜花
ひとひとり死んではならぬ死せる日々
満月光幾重幾重と死者の列
山河へと太鼓の太鼓の弔う日
離れよと柿の実ひとつ忘れよと
夜の冬名無しの森の記憶の河
師立ちて生死はコスモ修羅万象
河口は春古びた帽子風に舞う
ひとりふたりさんにんよにん桃の花
はじける種子よいのちへ祈る鳳仙花
日輪の旅も終わるとブナの森
●豈58号 2015年12月
豈銘鑑10句選
月明りポロンと自刃転がせり
夏みかん食べ頃でした兄は逝き
雨音は透いた傘打ち問いは消ゆ
いらだちのかあさん僕は奇妙かい
妻ひとり救えぬなんぞ野菊原
百年の桃の老木乙女咲き
唐門前修羅の脇ゆくごんぎつね
飛龍とて未完の神ぞ弦の月
降る雪や眠ることなき山毛欅林
男鹿の海両手なるらん白雲よ
過去の作品からの抜粋と考えられる。
「豈」への掲載はこの号をもって終了。