【俳句新空間参加の皆様への告知】

【ピックアップ】

2023年5月26日金曜日

救仁郷由美子追悼⑧  筑紫磐井

●豈 40号 2005年3月

  無音の河

目次では俳句作品となっているが、実際は詩作品。長文が同時掲載され、安井浩司論ともなっている。


●豈 44号 2007年3月

  ブナの森へ


あかつきの凍てる街路や修羅に会う

こわれゆくなと妻抱えしは銃後の街

夢見ふゆことば・言葉余白消す

鳴る鈴の鈴の音木立暮れはじむ

コーヒーと本と駅舎と桜道

青き海ちるさくら手にこころざし 心

白波と白き砂地の桜花

ひとひとり死んではならぬ死せる日々

満月光幾重幾重と死者の列

山河へと太鼓の太鼓の弔う日

離れよと柿の実ひとつ忘れよと

夜の冬名無しの森の記憶の河

師立ちて生死はコスモ修羅万象

河口は春古びた帽子風に舞う

ひとりふたりさんにんよにん桃の花

はじける種子よいのちへ祈る鳳仙花

日輪の旅も終わるとブナの森


●豈58号 2015年12月

  豈銘鑑10句選

月明りポロンと自刃転がせり

夏みかん食べ頃でした兄は逝き

雨音は透いた傘打ち問いは消ゆ

いらだちのかあさん僕は奇妙かい

妻ひとり救えぬなんぞ野菊原

百年の桃の老木乙女咲き

唐門前修羅の脇ゆくごんぎつね

飛龍とて未完の神ぞ弦の月

降る雪や眠ることなき山毛欅林

男鹿の海両手なるらん白雲よ


過去の作品からの抜粋と考えられる。

「豈」への掲載はこの号をもって終了。