ふけとしこさんとの付き合いは、2013年秋、船団の琵琶湖吟行句会があり、その帰りに心斎橋句会に誘われてからでした。船団心斎橋句会は、毎月第一日曜日に、ふけさんのご自宅で10名弱が集まって行われていました。毎回、ささやかなお菓子を持ち寄って、船団以外の結社の方も参加して、わきあいあいと行われています。この句会も今年5月、船団の散在と同時になくなり、寂しくなります。そんな中、去年、ふけとしこさんが第五句集「眠たい羊」を上梓されました。ふけさんは、博識です。草花だけでなく、動植物、そして俳句の基礎知識など、教えていただいたことに感謝しながら、俳句を鑑賞していきたいと思います。
薄氷つついて猫に嗅がす指
薄氷が張った日、うれしくてとった行動でしょうか。それとも猫が薄氷に興味を抱いたのを戒める意味もあって、冷たいよ、とさしだしたのでしょうか。なんとなく猫への温かい視線を感じる一句です。
心斎橋句会では、ふけさんから「ほたる通信」という、俳句とエッセイを書いたハガキを毎月いただけました。ほたる通信という名前が、ふけさんの亡くなった飼猫「ほたる」からとったものだと聞かされたのは、「ほたる通信」の配布が終わった早春の句会でのことでした。
戎橋新戎橋鳩の恋
ミナミの戎橋というのは、繁華街のド真ん中です。戎橋を一緒に渡れば恋愛成就などいう都市伝説もあります。大阪市内は、橋が多いことでも有名ですが、中でも戎橋、新戎橋は歩行者の多い橋として知られています。
戎橋だけでなく、新戎橋と反復させ、季語に鳩の恋をもってきたところ、都市伝説を知っていて読めばなおさら、橋を行きかう男女と小さな鳩が相まって、リズムよくキュートです。
向日葵の首打つ雨となりにけり
向日葵の首、おそらく長い茎のところでしょう。そこに雨があたる。夏の暑い日の恵みの雨であり喜んでいるのか、それとも夕立など不意の雨のことなのか。どちらにしろ、首打つという言葉がとても印象的な一句です。
コピー紙を置けば平らにくる冬日
平らにくる冬日、になんともいえない温かさを感じました。
平ら、というのは実写として、水平に窓から光が入ってくることでもよいし、心象として心に入ってくる光としても鑑賞できると思います。
寒い日が続くなかの冬日の温かさはうれしいものだし、コピー紙を前にコピーする仕事をこれからがんばろう、とやわらなか冬日の元で思ったり。いろんな場面を想像し、不思議と少し温かい気持ちになった一句です。
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