5月号は、齋藤愼爾×浅沼璞×大高翔×(司会)筑紫磐井による座談会である。
この座談会で取り上げられた作品を一部抄録する。
○浅井愼平『哀しみを撃て』(二〇一五年一二月東京四季出版刊)
【推奨句】
二月尽く香水の名はエゴイスト
旅鞄重きは春の深さかな
鮟鱇の闇を切り裂く汽笛かな
サーカスのジン多染み入る夕日かな
冬近し汽車の音する印刷機
始めから陰はありけり人の春
きみの弾くショパンは昏しソーダ水
紫陽花や鉄の匂いのする街に
降る雪や遠野の火事を告げられし
風花や燐寸するとき夜の雲
【問題句】
春愁や抱いてリルケの文庫本
○坪内稔典『ヤツとオレ』(二〇一五年一一月角川文化振興財団刊)
【推奨句】
笹の葉のさらさら蠍座の音か
熊楠はすてきにくどい雲は秋
柿はみな尻から太る伊賀上野
希望とはたとえば秋の切り通し
木の櫂の匂いを放ち夏の兄
バイオリン弾くはずだった裸木たち
首都にいるカナリア何羽?春の雪
従順を拒む一頭夏の馬場
尼さんが五人一本ずつバナナ
○稲畑廣太郎『玉箒』(二〇一六年一月ふらんす堂刊)
【推奨句】
アニミズムには朧夜がよく似合ふ
秋の蚊を払ふ越後美人の所作
春障子猫はだんだん人と化す
曲芸のやうな乗換へ山笑ふ
終戦の日の我が影の濃かりけり
子規虚子といふ冷やかな師弟かな
一片も散らぬ桜の疎ましく
黒く来て青く去りゆく揚羽蝶
落し文父の存問かもしれぬ
大雪崩とは人間の心にも
吾亦紅より吾亦紅までの距離
卯波寄す港イージス艦の黙
生身魂大和に乗つてゐたといふ
芦屋市に生まれて烏の子の運命
駅で買ひ宿に失せたる時雨傘
【物議のある句】
身に入みて未来を拓く覚悟かな
※詳しくは「俳句四季」5月号をお読み下さい。
東京四季出版 「俳句四季」
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