(鼎談: 筑紫磐井×中西夕紀×田島健一 )
田島 今年はとくに雑誌の付録として平成二十六年俳諧國之概略」(以下、「俳諧國」)というかなりシニカルでマニアックな、俳壇の見取り図をつくっています。みんな考えることかもしれないんですけど、実際にそれをこれだけポップな感じで作った、いろんな批刊も含めてもっと話題になってもいいかなと思いました。
筑紫 書かれた人がみんな満足していないからじゃないの(笑)。
(中略)
田島 まあ俳句が全体としては「クブラス」のことはあまり語られなかったなと。若手のなかではけっこう話題になったんですけど。
筑紫 あまり話す機会がないですよね。じゃあ、この場で少し――あの、これ(「俳諧國」)をグランドデザインしたのは山田耕司さんでしょ。で彼は「ワタシなき合ワタシ性」という文章のなかで《伝統》対《前衛》というのはもう古いから三項対立だというふうに.言ってるけど、じつは二項対立を二階建てにすると三項対立になるじゃないですか――AかAじゃないか、BかBじゃないかをぐちゃっとくっつけると、AかつBか、Aだけか、Bだけかという。だから基本的には画期的なことを言ってるわけではなくて、二頂対立を積み重ねた感じがするんです。
ただ非常に見やすいことは見やすいんで、たとえば金子兜太と高柳重信派は在来から言われている二項対立ですね。ただいい加減なのは、たとえば澤好摩を高柳重信の代理だとしてみると、金子兜太が「ロマン主義」なのはまあいいかもしれないけど、えっ、高柳重信が「旧前術派」?これは怒るなあと(笑)。なんたって前術派はもともと金子兜太だったのになんでって。だから第二番目の階層の名称がかなり恣意的ですね。
たとえば石田郷子を「等身大派」といってるけれど、中西夕紀や仙田洋子は絶対「等身大派」じゃない。そもそも「等身大派」というのがよくわからない。石田郷子さんはどちらかというと細見綾子的な世界観がある人かなと思ってるんで、そう思ってみると中西さんや仙田さんはそこにはいる人たちじゃない。それの最たるものが「分からないとダメ派」(笑)。こんなのひどいなあと(笑)。
田島 これひどいんですよだから(笑)。
筑紫 基本の三角構造はいいんだけど、その次の第二階層がなんかまじめに議論する気がなくなっちゃうような名付け方じゃないかな。
田島 たとえば鴇田智哉さんとか安井浩司さんが同じ大きさの字で「原理主義」となってて、これなんかずいぶん話題になって。「原理主義」というとかなりインパクトのあることばなんですけど。だからこれはみんなにわかってもらおうというよりも、むしろみんなをいらだたせようという思惑があるんで。たぶんいろんな人がいらだったと思うんです(笑)。でもそのいらだちがあまり表而化しなかったなあというところが……。
筑紫 だから続くような議論になってないというところですね。「クプラス」の一号はなんの特集やったかというと長谷川櫂と夏石番矢ですよね。これはだれでもわかる二瑣対立ですよ。あれもいろいろ批判はあったみたいだけれど、引き継げる。ただ今回のはなかなかこれでまじめに評論書けないんじゃないかなと。
(中略)筑紫 思ったのは、なんか有楽町のガード下でおじさんたちが酒飮みながら気炎をあげているような(笑)。座談会(「平成二十六年の俳句界をマッピッグしてみたらこんなことになった」)には女性いないもんね。まあ、第三号でどうなるか。
田島 いま言ったいらだちのようなものはスポンジのように吸収されて表面化しないわけで。これにもっときれきれに反応するようなのがあっても……それだったらお前がしろよって言われちゃうんで(笑)、言いにくいんですけど。
筑紫 私か思うに、「クプラス」と「オルガン」つてカタカナ四文字じゃない、どうみたって「オルガン」は対抗意欲もってるんじゃない? あんなのにまかせておけないということで創刊したんじゃないかと邪推しましたけど。
田島 いやいや、ぜんぜん違いますよ(笑)。メンバーは一部いっしょですし。自分たちがやろうとしてることは違います。
筑紫 これは人をいらだたせることを目的とした雑誌だけど(笑)、「オルガン」はそんなつもりはないでしよ。
田島 われわれもいら立ってほいしいというのはありますよ(笑)。暖簾に腕押しですけどね。
※詳しくは「俳誌要覧2015」をお読み下さい。
東京四季出版 「俳句四季」
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