2014年4月11日金曜日

【竹岡一郎作品 No.11】  火葬場  / 竹岡一郎

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     火葬場   竹岡一郎

三月二十七日午後零時火葬

父入れて火葬の窯「十二時」の札
 
薫るため桜の柩燃ゆるなり

柩いま火界や唄ひ舞へる父

父焼くあひだ刺身喰らつて酒呑めり


三月二十三日午前三時八分永眠

舌と唇湿せり死に水と知らず

死にたての父を整へわが十指

死せる父置いて仮寝や夜明けまで


三月二十七日午後二時半骨揚げ

焼きあがる父あたたかく佳く香る

骨揚げの父や廃墟に似て清ら

火葬経てまほらを探るらしく父

火葬場役人無心に骨の名を説けり

葬花か薬か浅葱に色づく骨

父の骨秘史の欠片のやうに謎

父よ始祖鳥の化石の姿勢よ翔べよ

親族退け夢中で父の骨拾ふ

迷ひ箸して父の骨選び上ぐ

拾ひ納めの骨や花弁の瞼の容(なり)

花よ父の骨観る我も骨また鬼

骨壺二つ小さきは私が祀らう

骨壺に頰載せ劫の間を居眠る


【作者紹介】

  • 竹岡一郎(たけおか・いちろう)

昭和38年8月生れ。平成4年、俳句結社「鷹」入会。平成5年、鷹エッセイ賞。平成7年、鷹新人賞。同年、鷹同人。平成19年、鷹俳句賞。
平成21年、鷹月光集同人。著書 句集「蜂の巣マシンガン」(平成23年9月、ふらんす堂)。

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