2014年4月4日金曜日

【俳句作品】平成二十六年 春興帖 第五

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     羽村 美和子(「豈」「WA」「連衆」同人)
鳥雲にポケット何だかさびしい
野火走るやがて逆巻くプロパガンダ
風のうた水のうた聞くみすゞの忌

     長嶺千晶(「晶」代表)
逝かしめし春万灯の金の雨
ゆくりなく潮筋重ね彼岸かな
兼好忌折々覗く古本屋

     望月士郎
命名の雨ものの芽に降りそそぐ
有史とは駱駝のまぶた春の塵
踝に見知らぬ町のひこばゆる

     音羽紅子(北見出身。童子会員、オホーツクの風土を詠みたいと俳誌「ゆきしづ                  く」を2013年にはじめる。)
名残雪青白くある夜明けかな
咽のまだひりひりとして春の風邪
早朝や雪解雫のまた凍り

     下坂速穂(「クンツァイト」「屋根」)
こゑは雀やはるけさの紀元節
街に園名残の雪に日のあたり
苗札に平仮名で書くふらんす語

     岬光世(「クンツァイト」「翡翠」)
この木ならかうしてすくふ涅槃雪
後にする講堂広し卒業す
音量の足りぬソプラノ春の庭

     依光正樹(「クンツァイト」主宰・「屋根」)
梅林にあつて遠くを見つめる目
たくさんの苗札が波白き波
草深く持ち歩くもの彼岸かな

     依光陽子(「クンツァイト」「ku+」「屋根」)
水を出て数分陸で公魚生く
野焼の火うつくしき詩を携へて
一行や白き椿に頭を低く

     岡田由季
目算で百匹ほどの蝌蚪群るる
ハ長調アスパラガスの頭を揃へ
磯巾着躁状態にあるらしき



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