※画像をクリックすると大きくなります。
火葬場 竹岡一郎
三月二十七日午後零時火葬
父入れて火葬の窯「十二時」の札
薫るため桜の柩燃ゆるなり
柩いま火界や唄ひ舞へる父
父焼くあひだ刺身喰らつて酒呑めり
三月二十三日午前三時八分永眠
舌と唇湿せり死に水と知らず
死にたての父を整へわが十指
死せる父置いて仮寝や夜明けまで
三月二十七日午後二時半骨揚げ
焼きあがる父あたたかく佳く香る
骨揚げの父や廃墟に似て清ら
火葬経てまほらを探るらしく父
火葬場役人無心に骨の名を説けり
葬花か薬か浅葱に色づく骨
父の骨秘史の欠片のやうに謎
父よ始祖鳥の化石の姿勢よ翔べよ
親族退け夢中で父の骨拾ふ
迷ひ箸して父の骨選び上ぐ
拾ひ納めの骨や花弁の瞼の容(なり)
花よ父の骨観る我も骨また鬼
骨壺二つ小さきは私が祀らう
骨壺に頰載せ劫の間を居眠る
【作者紹介】
- 竹岡一郎(たけおか・いちろう)
昭和38年8月生れ。平成4年、俳句結社「鷹」入会。平成5年、鷹エッセイ賞。平成7年、鷹新人賞。同年、鷹同人。平成19年、鷹俳句賞。
平成21年、鷹月光集同人。著書 句集「蜂の巣マシンガン」(平成23年9月、ふらんす堂)。
0 件のコメント:
コメントを投稿