ボスニア・ヘルツェゴビナから届いたhaiku
正月にFacebookを眺めていたら、知人の海外の俳人が幾人も「今年も欧州のトップ俳人100人に選ばれた!」みたいな投稿をしていた。背景の詳細は知らないが、毎年そういう選考結果が発表されるらしい。僕が知る限りで実力者ばかりだったので、信頼できる選出と思える。
今回はその100人の中から、ボスニア・ヘルツェゴビナの俳人、レフィカ・デディッチさんを紹介したい。というのも、たまたまその少し前に彼女からFacebookのメッセンジャーで連絡があり、句集のPDFを送ってもらっていた。書名は『HANAMI(花見)』。
the morning sun
bow from the terrace
a new day
朝日 / テラスからのおじぎ / 新しい一日
dust
on an old postcard
cherry trees alley
ほこり / 古い葉書の上に / 桜の木の小道
red petals
scattered on the asphalt
unrestrained youth
赤い花びらが / アスファルトに散る / 奔放な青春
mimosas
to the girl‘s room
no entry
ミモザ / 少女の部屋は / 立入禁止
sun
in a lavender field
tickles the face
太陽が / ラベンダー畑で / 顔をくすぐる
経歴を読むと、二〇二一年に第一句集『さくら』を刊行し、本書は二〇二三年刊行。花見という行事に注目したのはおそらく彼女の俳句観にも通じていて、俳句を「単なる詩」を超えた「詩的生活」「心の状態」「生き方」とも捉え、まさに花見はその象徴と思える。
それは〝詩の美〟だけでなく〝美しく生きる〟というテーマにもなるが、さらにそのことを少なからぬ西洋人が「善」「平和」につなげて考える傾向があるように思えるのが興味深い。本書あとがきの「編集者の言葉」から引用する。
「この本に取り組むことは、私にとってリフレッシュであるだけでなく〈中略〉より良い世界への逃避でもありました。なぜなら〈中略〉俳句は一種の祈りのようなものであり、その主な理由は、俳句が憎しみ、暴力、破壊、分断などのメッセージを決して伝えていないという事実によるものです。」
俳句が「より良い世界」の一助になりうる、とは日本人にはあまり自覚がないだろうが、ひょっとすると俳句の美徳のひとつかも知れないし、遠くない過去に紛争を経験した国の俳人からそれを指摘されるのは、どこか嬉しくも感じる。
※写真はデディッチさんのFacebookページから引用
(『海原』2025年4月号より転載)
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