バックナンバー全てがある訳ではないので、手元にある「琴座」から選ばせていただく。追って追記したい。
●琴座 平成元年11・12月(454号)
這賊集
大井 ゆみこ
薔薇園ノ少女が死ンダ夏が来ル
積木積ム室ノ白壁日ヲ止メル
空虚とロックスカートに赤い髪
踊らない十五歳彼岸ハイヒール
死にゆく口火の見やぐらは深く焼ゆ
琴座集
じゃんけんぽん曇った空に友他界 東京都 大井 ゆみこ
置きざりの生きてる不思議動かせぬ
闇惑う見ること聞くことかかえしも
星月夜マシュマロ含んだ秋を待つ
風さわぎ路面電車の白昼夢
●琴座 平成2年1月(455号)
這賊集
大井 ゆみこ
十代の夢はっながらぬ十字路赤信号
少年の皮膚に被さる母の夢
春風にへその緒切って未央あちら
赤まんま静かに思い染めあげし
鰯雲ただ泣きじゃくるつたなき日
琴座集
往路あり降り積む疲れ夜露あり 東京都 大井ゆみこ
ヤリ切レヌフルサトハナシステーション
往生に水底行きて挨拶す
月光が呼吸の谷問に挾まるる
●琴座 平成4年7・8月(477号)
這賊集
大井 ゆみこ
虚空にて面影たどる五月哉
洞はかの五月に死した男持つ
四ツ辻や解決不能回転す
朝な夕な引きさかれては燃ゆ山河
山肌に国是流せよ立つ緑
●琴座 平成5年7・8月(483号)
這賊集
大井 ゆみこ
月下の船天地水木櫓に交わす
川上に死の灰拒んだ絵看板
六月の闇に迷走笑い草
窓枠に山河見ばえし死化粧
白光や泥はね路地踏む祭かな