投句〆切8/11 (水)
選句〆切8/21 (土)
(5点句以上)
8点句
夕立や手前の雨と奥の雨(依光陽子)
7点句
夏逝くや指紋の付いたセロテープ(近江文代)
【評】 誰の指紋かは別として、もはや真に透明ではないセロテープがアンニュイな感じを伝えます。──小沢麻結
【評】 「指紋の付いたセロテープ」から様々な場面が想像できて、ある夏の日を思い返した時の少しセンチメンタルな気持ちをモノで表現し得た。
また「指紋の付いたセロテープ」を心象と受け取る事もできる。いずれにしても「夏逝く」が動かない。「行く」とせず「逝く」と表記したところもよく考えられていると思った。──依光陽子
6点句
躾糸抜く如くするすると蛇(仙田洋子)
【評】 気持ち良く楽しい表現で、蛇の動きを例えている点、蛇の見た目やサイズ感を伝えて、作者がこの蛇を嫌って詠んでおられないことが伝わります。一緒に見ている気にさせてくれました。──小沢麻結
【評】 草に見え隠れする蛇の姿、またその不可思議で滑らかな動きが「抜かれる躾糸」によって鮮明に浮かびあがりました。──青木百舌鳥
炎天の書肆に学徒の蔵書印(筑紫磐井)
【評】 景と物の提示だけなのですが、学徒の一言で古書店と解り、季語炎天から当時の時代背景や苦渋の決断までイメージされ、詩的。──山本敏倖
【評】 書店で思わぬ学徒の本の蔵書印の発見は驚きです。敗戦日が頭に浮かんで来る句です。──松代忠博
【評】 日本人は8月と言えば原爆、敗戦の日、それにお盆ですね。これは古書肆でしょう。戦前の、学生が大切にして蔵書印まで押した本。持ち主は学徒出陣で戦死したか、或いは卒業後に特攻になったか。いずれにせよそういった話ももう70年以上前の曖昧な記憶となりつつあります。──仲寒蟬
【評】 八月はかつての戦争や原爆に関わる句を作り、また選に選びたいです。戦争や原爆に関する句は、類句類想は許されると、私は思っています。──水岩瞳
5点句
夏休み始まる鉄橋を越えて(内村恭子)
ががんぼの脚取れ夜が非対称(望月士郎)
【評】 夜の非対称に向けて、一気に傾ぐドライブ感──真矢ひろみ
(選評若干)
あらやしき積乱雲にみえかくれ 3点 妹尾健太郎
【評】 新屋敷なのか荒屋敷なのか阿頼耶識なのか不明なのがよい──望月士郎
扇風機ふたつ黒潮親潮めき 3点 青木百舌鳥
【評】 あ、面白そう! たばこの煙でうまく可視化できるかしら。私も試してみたいですが、我が家には扇風機が1台しかなくて。──渕上信子
掃苔やトマトが置かれある墓も 3点 西村麒麟
【評】 畑から捥いできたものだろうか。日持ちはしないお供えだろうけど、心やすい感じが見える。──佐藤りえ
夕焼けへ金魚と帰る金魚売 4点 望月士郎
【評】 「や」切りにするか。「を」にしようか。考慮の末に「へ」と治定なさったものと見受けます。山の彼方の空遠くという気配になって来て、〈金魚大鱗〉の先行句も思わせつつ、情趣ゆたかな一句と感受します。──平野山斗士
【評】 もうないであろう懐かしすぎる郷愁──依光正樹
平らなる青野を鴉づんと踏む 1点 平野山斗士
【評】 鴉が意外な重量感で青野を踏みしめる。知能の高い鴉が何の意味もない行動をするだろうか。水脈はここにあるよと人間に教えているのかもしれない。──妹尾健太郎
もしやかの黄泉戸喫か心太 4点 真矢ひろみ
【評】 黄泉戸喫を知りました! 短詩は言葉に工夫がいるが、知識もいるねえ? むずおもです…! 生きている人間の逞しい想像力の賜物ですか?──夏木久
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