2024年10月25日金曜日

『澤田和弥句文集』特集(1-3)第1編➂ 無題 澤田和弥

 これは澤田和弥の実験的個人誌です。手書きによる一枚のみです。私の手元にも写しを残しませんので、此岸彼岸ともにこの一枚限りです。第45号をあなたにお送りします。バックナンバーは別の方に送りました。次号以降はまた別の方に送らせていただきます。ちなみにタイトルはございません。固有名詞化しないためです。では始めさせていただきたく存じます。


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(承前)だけです。しかし、前時代的であれ面白そうだと思いました。偶然性を復権させたくなったのです。このバックナンバーを読むことはおそらくあなたには不可能です。そしてこれはあなたを特定して書いているものではありません。書き終わった後に住所録を繙き、目に入った方にお送りしていますので、この第45号があなたのもとに届いたのは本当に偶然でしかありません。そしてあなたが破り捨てることなく、これを読んでくださっているのも偶然でしかございません。しかし宇宙が生まれたのも偶然でしかありません。必然ではない、我々も又、偶然の産物です。世の中は偶然でできています。しかし職場にいても、どこにいても必然を求められます。たしかに私も必然を求めます。コンビニで煙草を頼んで、肉まんを出されてもドキドキしてしまいます。新聞やニュースには真実という必然が求められます。私も求めます。誤報は山脈のようにありますが。必然が要求される社会において、たとえイカサマの狂気沙汰でも偶然性を試みたい。それが私の考えです。突然ですが、その実験としてちょっとした文章を書いてみたいと思います。なにとぞお付き合いください。(次号へ)

無題という文章

 これは或る男が10年近く前にSNSサイト「mixi」の日記に書いた汚物、いや文章を抜粋したものである。筆者には許可を取っているので著作権上、問題はない。著作権者は私である。いやいや。もとい。或る男である。この男は10年ほど前に東京23区内の或るアパートの一室でこんなことを書いていた。

〇不合格通知が速達で届いた。何を急いだ。

〇書留郵便が不在のため、渡せないと通知があった。真面目な配達員である。これを口実に捨てたのかもしれない。急いで連絡とる。送り主は先日応募した会社である。合格か!受取時間を指定して、他の予定をキャンセルして、わくわくと部屋で待っていた。なかなか来ない。もうじらしちゃって。そういえば前戯は必ず一時間以上するという大学の痴人、いや知人がいた。それはどうでもいい。郵便である。来た。何だ。不合格通知である。なぜ勿体ぶった。普通郵便でよろしい。これならばいっそ捨ててもらった方が、精神衛生上よかった。(26.8.24)