散つてゆく
朝影よ露おく芝のやさしさよ
鶏頭の種を銜へに蟻が行く
柚子青し淡路瓦へ通り雨
小鳥くる紫陽花の色抜け切れば
百合の実を振るや昔の散つてゆく
・・・
草の穂が美しい。
薄は言うに及ばず、大きなものならパンパスグラス。小さなものならミチシバ(道芝)まで。大方はイネ科の草の穂である。
目下、私の仲間に大人気なのがミューレンビルギア・カプラリスという穂草。最近では植物園や公園などにも取り入れるところが増えてきて目にすることも多くなった。特徴は何といってもその穂のピンク色と繊細さ。小高くなった所や少し起伏のある所に植えられると、平面的に見るよりいっそう美しい。案内すると皆が声を上げる。私が知ってから4、5年が経つだろうか。
吹田市の万博記念公園に花の丘という一角があり、四季を通じて花が楽しめるように作られている。
今はコスモスやコキアが中心だが、アカソバ(赤蕎麦)などに並んで、このミューレンベルギア・カピラリスも植えられるようになった。草丈は60~80センチ程だろうか。その花というか穂は薄紅色をしていて、霧のような、或いは煙のような、とても幻想的な景色を作り出している。
和名は無いのだろうか……と探していたら、ネズミムギ(鼠麦)の仲間だということが分かった。が、桃色鼠麦などと呼んでみても、あまりしっくりこない。長くても覚えにくくてもこの片仮名の方がいいようだ。鼠麦なら、どこにでも普通に生えているけれど。
片仮名と言えば、コキアは何故コキアになってしまったのだろうか。昔ながらの箒草や帚木では野暮ったいということなのだろうか。
ミューレンベルギアには白い穂を上げるものもあって、そちらはリンドハイメリとかいうらしいが、珍しさ、華やかさ、細やかさでカピラシスにはかなわないだろう。
カゼクサ(風草)やヌカキビ(糠黍)を知った時にもその繊細な穂の美しさに感嘆したものだったが、ミューレンベルギア・カピラリスにはそれ以上のインパクトがある。
俳句に詠めるか? どう詠むか?
しろがねの穂の戦げるを冬といふ としこ
これはパンパスグラスを見ていて出来た1句だったが……。因みにパンパスグラスの和名はシロガネヨシ(銀葭)というそうだ。
(2024・10)