面123号「目と手」(2018年7月)
花筏途切れ千切れた空となり
形なき棘のありけり春憂ひ
花曇り遥かに生きて足らぬもの
春の野や雲に追はるる雲のあり
そもそもに我らの在りて蜃気樓
紫陽花や明日は未来と言えまいか
地球儀の海の波音半夏生
西瓜かな丸く大きくもの悲し
烟るごと雨となりけり椎の花
三択のふたつを捨てし梅雨の晴れ
面124号「修羅の渚(渚のY子へ)」(2019年4月)
結ぶ手を開きて蝶のかたちかな
玉の緒よ絶えなば絶えね蛸になれ
旅立ちに文字を手向けむ夜光貝
背の肉に沈む背骨や秋暑し
眠り姫に加へる睫毛秋の朝
花すすき柩車傾きながらゆく
山本鬼之介さん「水明」主宰就任
鬼赤く水の面を明るくす
砂浜は文字であふれむ月の冴え
身と蓋を組み立ててゐる睦み月
皺くちやの袋の中はあたたかし
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