実の青き
あさざの黄ががぶたの白夏つばめ
残りたる梅杖で指し傘で指し
昼顔や挙玉の柄の握り艶
夏雲やあの木この木と実の青き
父の忌が近し金魚の水替へて
・・・
電話。
「ああ、またそのお話ですか」
「は? 今迄にもありましたか? どこからですか?」
「いえ、私はもう結構ですから」
詐欺とまでは言わないが、詐欺まがいの話なのである。三度目ともなると、こちらも馴れてくる。さっさと電話を切らせて頂いた。
最初は日光東照宮の何とか殿にあなたの作品を飾らせて頂きますので……ああだこうだ……。お断り申し上げた。「とても名誉なことなのですよ」と食い下がられたが、電話を切った。
しばらく経って今度は下鴨神社の○○殿だったか、○○の間だったかにあなたの作品を云々。名前も忘れたが、とても権威のある書家の先生がお書き下さってどうとか……。
「幾らか請求なさるのでしょ?」と聞くと十何万円だという。前回の話より高い。
最初の電話の主は私の句をどこで調べたのか知らないが、読み上げて「こんな素晴らしい俳句は何としても多くの人に見て頂いて云々」ところが漢字の読み方を間違っていた。何かの名簿を見て片っ端から電話を掛けているだけだろうから追及しても仕方がないが。
三度目というのはつい最近の事である。平安神宮が会場だという。
それで思い出したことがある。
三千院を訪れた時に、さる俳人の色紙が通路に一枚貼ってあるのを見かけたことがあった。その時は、このお寺と何かご縁がある人なのかな、と思って過ぎたが、もしかしたらこんな勧誘があってのことだったのかも知れない。
〇〇に載せてあげます。掲載料はウン万円です。という電話は昔からあるが、今までのところお断りしている。老化が進み判断が怪しくなって「あらあら嬉しいこと!」とならないようにしなければ……。
(2022・6)
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