2015年8月21日金曜日

【2015こもろ日盛俳句祭】 夏の思い出 / 北川美美



今年も夏の小諸へ行ってきた。 「こもろ日盛俳句祭」への三回目の参加である。
容赦ない痛い日射しが照り付け鍛錬句会に来た!という実感がこみ上げる。

ちなみに8月1日の気温を見ると長野市で最高温度35度/最低27度。東京の35度/27度。同じ気温であるのに日射しが痛い。標高が上がった分、太陽に近くなることが小諸の陽射しが痛烈に感じる要因なのだろうか。今回イベント開催第七回目を迎え、参加者が300人を超え記録を更新したそうだ。連日の猛暑の中、無事イベントを終えられたことにお慶びを申し上げたい。

小諸高浜虚子記念館 

参加した句会を中心に以下日記風に。


日盛俳句祭は午前中が吟行、午後が句会というようにスケジュールが組まれていて、吟行へのサポートが厚い。巡廻タクシーが手配され、いくつかのコースを選択することができるのだ。 投句は「嘱目句」「当季雑詠」も可。イベント告知時にすでに兼題が決まっている。ちなみに兼題は7月31日「百日紅」8月1日「鮎」、8月2日「夕立」。

虚子庵

懐古園 (撮影:青木百舌鳥)

みはらし交流館(撮影:青木百舌鳥)

山城館(撮影:青木百舌鳥)

8月1日。第二日目の句会場「應興寺」に到着。扇風機が3-4台ブンブン首を振ってフル回転。 スタッフの俳人として土肥あき子さん、中田尚子さんが座られていた。そして流れる汗を拭きつつ息を整えて会場を見渡すと昨年参加した同「應興寺」会場で同席させていただいた時と同じ参加者のお顔がみえる。デジャブな気分になったがデジャブではなく、このイベントの特徴として、参加者もスタッフの俳人の方々もリピート率が異常に高いのだ。同じ顔ぶれというのは「夏潮」所属の柳沢木兎(やなぎさわ・もくと)さん、柳沢晶子(やなぎさわ・あきこ)さんご夫妻と木兎さんの妹様の御厨早苗(みくりや・さなえ)さんの御三人である。 お写真で紹介できないのが残念だが、御厨さんの日盛会のTシャツにバンダナ、そして白い眼鏡が印象的で、この御三人にお会いすると昨年と同様、夏潮の湘南の風が小諸のこの寺に吹いている気がしてくる。サーフ&ハイランドという感じだ。


應興寺 社務所入口

土肥さんも日盛俳句祭での常連のスタッフである。信濃毎日新聞に連載をされていて、実際に読者の方々と同じ空間で句会が出来、お話しができることに収穫があるとおっしゃっていた。

夏帽子風にも会釈していたる 土肥あき子 
青胡桃一本吸って立ち上がる 中田尚子 
高原や一点となる白日傘 中田尚子 

夏燕庫裡の先の先を跳ぶ  柳沢木兎 
朝顔の軒深くまで咲き昇り 柳沢晶子

また、夏潮所属の福岡から到着された、田中香(たなか・かおり)さんも参加されていた。

鶺鴒のひたひた渡る清水かな 田中香

私が特選に選んだのは、

炎天や小諸の街の玉子色 荒井民子

地元スタッフとしてお世話をしてくだっていた荒井民子さんの句である。 どこか玉子色、なんとなく生成り色に近いレトロ感が炎天にさらされている小諸がイメージでき、好きな句であった。


小諸駅を背にして坂を見上げる


同じ会場に内堀たつこさんとおっしゃる地元・小諸市在住の方が参加されており、この方も昨年の「應興寺」会場でご一緒だった。家業の農業をお休みされて毎年この日盛祭に参加されているそうだ。すでに、内堀さんは、毎年この場でお会いになられる俳縁でのご友人がいらっしゃる様子で、再会を愉しみにしていらっしゃる様子が伝わって来た。

そういう出会いの場もあり、年に一度の再会が楽しいというイベントというのもいいなぁと思う。様々な境遇や世代、立場を超えて、何はともあれ小諸に集結、というところが、いい。縁あって虚子が小諸に疎開したとはいえ、虚子の力は、人が集う力となり磁場を創る。 そして句会という座に於いて参加者はあくまで平等なのである。

シンポジウム後の懇親会中、夕立が来て、小諸の街が洗われていく様子がベルウィンから見える。この日の夜は、地元の「どかんしょ祭」が開催され、夕立の後の街は大賑わい。会場として使われているベルウィンも仮装やら大きなハリボテ人形を担いだ地元の方々が出入りする。

二日目の懇親会に参加のスタッフの皆様
(撮影:青木百舌鳥)

この日の夜、虚子も通ったという居酒屋「揚羽屋」に流れる。他の居酒屋では夜盛句会の名の元、句会も行われているようだ。 「トマトが甘くておいしいわよー!」と中西夕紀さんにすすめられ、冷やしトマトをいただく。甘い。少し酸味のあるフルーツトマトのような甘さ。同時に筑紫さんお気に入りの鳥の唐揚げの大皿が運ばれて来る。どっさり盛られていたキャベツの千切りに手を伸ばし、もくもくとキャベツを食す。キャベツも甘い。野菜が濃厚でじわじわと甘い。高原に来たッ!という感慨が味覚からも実感できる。 

虚子庵

虚子記念館脇の個人庭園 (この日も暑い中、お手入れをされていた)

8月2日。イベント三日目。猛暑。午前中は、冷房の効いた虚子記念館にて筑紫氏と「俳句新空間」の入稿打ち合わせ。その後、炎天の虚子庵の裏手を一巡する。いや暑い。与良町という地域であるが、虚子の散歩道といわれるところで、細い坂道が県道まで抜けていて、遮る建物もなく浅間山が眺望できる。歩いていると、「俳人のための水田」(確か)と名付けられた区画があり、俳句を学ぶ方々に稲作を体験してもらう、という与良町の有志の方の計らいであるらしい。稲は水田の中でまっすぐに延び、勢いがついているように見えた。2か月後には収穫され新米としてふるまわれるのだろう。

水路が与良の路地を流れ、Y字路に馬頭観音がある。昔、馬がこの坂道を往来し、稲作に欠かせない動力だったことを想像する。その馬頭観音には毎年、ダリアが鮮やかに手向けられている。馬頭観音を守りつづける地域のコミュニティ力が感じられた。また自宅の駐車場で葡萄を口にして、その種が育ち、葡萄棚を作るまでになった御宅の葡萄が、今年はすでに袋掛けされていた。暑さの中で次の季節に向けて準備しているのだ。 その後、ベルウィンに戻った後、お昼は、蕎麦をいただく。炎天を歩いた後の喉を通り過ぎる蕎麦が心地よい。



三日目の兼題は「夕立」。ベルウィンの句会場にしぼられ、「えぼし句会」と名付けられた部屋になる。 スタッフの俳人の方々は、本井英さん、高柳克弘さん、奥坂まやさん、山西雅子さん。 そして、森泉理文さん、勝又楽水さん、内堀うさ子さん、飯田冬眞さん、篠崎央子さんのお顔が見える。

銅の奥の流しや瓜冷やす  山西雅子 
ことごとく灼けて生者と墓石かな 奥坂まや 
百日紅この世に門の数多ある 高柳克弘

いずれもこの地で作られたことを思い印象に残った。

飯田冬眞さんの句に軒並み点が入る。特選句が二句。

隠密の裔と古城の瑠璃蜥蜴  飯田冬眞 
空蝉や生まれ変はるに良き樹なり  〃

いずれも懐古園での作と伺う。 瑠璃蜥蜴の不思議な色の輝きと古城の歴史が印象に残る。
地元の俳人の方々、そして小諸市観光課の方も句会参加され、観光名所の説明がところどころに入り熱意が伝わってくる。運営側、句会を回す俳人スタッフ、参加者が同じ空間を共有する句会というシステムが面白い。

最終日のフェアウエルパーティ。 イベント開催中、毎日句会後に懇親会が開かれ、協賛各社からの商品、そして裏方として協力の俳人の方々から短冊が提供される。昨日くじが当たらなかった森泉理文さん、島田牙城さんの里の皆さんにくじ運が回ってきていた。司会進行は連日大活躍の仲寒蟬氏であった。 来年は地元スタッフとして里の皆様がご協力くださると挨拶があった。面倒見のよい牙城さんの人柄から再び若い世代の参加があるのかもしれない。


 三日目 フェアウエルパーティ


水引草


今年も熱波の中、こもろ・日盛俳句祭が終了した。 小諸から帰ってくると間もなく立秋となった。夏が過ぎ去ったという感慨に浸る。



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