2024年1月26日金曜日

【連載】ほたる通信 Ⅲ(42)  ふけとしこ

    熊笹に隈

栂の実の五つを並べ冬籠

石を打つ雨冬菊を叩く雨

古九谷のひといろ貰ひ竜の玉

冬ざれや我も鴉も川を見て

二十日正月熊笹に隈清ら

・・・

 新しい七草なるものが売られていた。

  芹→三つ葉 

  薺→ 高菜

  御形→春菊

  繫縷→法蓮草

  仏の座→葉牛蒡

  菘→葉蕪

  蘿蔔→葉大根 

というように変えられていた。いわゆるベビーリーフ。小さな葉物が詰められていて「定番の品種を近い系統のなじみのある品種に変え、新しい七草を選定しました」との説明が書かれていた。確かに七種に違いない。

 自分ではとても揃えられないから、毎年パック詰めのセットを買うのだが、本当にハコベばかりが多くて苦笑せざるを得ない。しかも同名である故の間違いから、本来ならホトケノザとしてタビラコが入るべきところに、同名異種のホトケノザが入っていることもあるからややこしい。

  仏の座光の粒が来て泊まる としこ

  畦道の昔へ続く仏の座

 かつて、こんな句を作ったことがあり、鑑賞して下さった方も何人かあったが、この解釈は黄色い花の方だなとか、赤紫の花の方だな、などと思えたりして作者である私も楽しませて貰ったことがあった。黄色い花はタビラコ(田平子)であり、赤紫の方はサンガイグサ(宝蓋草)との名前もある。

 サンガイグサの方は春の花に分類されてはいるがほぼ一年中見られる。つまり摘み放題であるが、タビラコの方は新暦1月7日にうまく見つけられるかどうか?

 レンゲの咲き始める頃の田んぼや畦なら成長していて難なく見つけられるけれど。

 因みに、私の好きな仏の座の句は次のもの。

  是ならば踏んでも来たり仏の座  梅室

 「仏の座なんていうから、どんなに有難いものかと思っていたが、なんだ、こんな草だったのか。ここへ来る途中の道端で踏んで来たよ」とでもいったところか。まさにあるある……。一座も和んだことだろう。

(2024・1)