【未定掲載句】全冊
●65号(1995年5月25日)
都市/大井ゆみこ
抱き止めて迷路にはホラはぐれ猫
夕ぐれの壁に背合わすハンプティーダンプティ
亡き人と共寝た薔薇は冬の季語
逝きて空へ吊す薔薇は乾ききる
れんげ田の記憶貼りつけ閉じる窓
感触はネオンライトに花いちもんめ
白雲に天馬を描く尻軽っ娘
寒き肛門となめらかな皮膚語る男(ひと)
暴爆の天心街ははにかめり
TKIOの草に群衆がつまずく日
●66号(1995年5月29日)
差異/大井ゆみこ
突然です私の顔がない鏡
雨のこだわり知らぬ反転逆転か
生と死と虹はその色分けにけり
むだ死にへ彼岸花幾重も群生し
無数に死光る今宵の街景色
地層にも虐殺の骨重なると
空々と死の灰真実信じます
空白な顔の白波夕月夜
風吹かれレモンポトスは痛かりし
白湯を手に差別はいつも逆立ちさ
極楽へ再生サ行連続せよ
地図芽ぶく緑の夢見は五億年
真昼また言葉の影を売る男
ラジオでは晩は嵐と愛捜す
逃げなんて立ち止まろうか金木犀
かきの木の重ね月日はあったかお手々
最愛の記録は原っぱ赤まんま
野菊の花の古き陰影真空律
相槌に愛の破片の寄せ木あり
恋ひとは夢びとなれば夏祭
●68号(※編集作業中に見つからなかったので省かせていただく。)
●69号(1996年10月27日)
影/大井ゆみこ
黒繻子のわたし飛べない羽抜け鳥
満月が昇らず緋色地平線
かあごめかごめ腕の内側吹きぬける
このごろは明けぬ夜明の春さがし
震災の山河抱くは日暮かな
積もる雪女人仏の裸足欠け
ひとひとひと正しい道を皆垂線
花芽あり雨は真すぐ降りてくる
影向こう白きいちごの香り立つ
木々と木々愛のささやき厭きて秋