【俳句新空間参加の皆様への告知】

【ピックアップ】

2023年4月7日金曜日

救仁郷由美子追悼⑤  筑紫磐井

【未定掲載句】全冊

●65号(1995年5月25日)

都市/大井ゆみこ

抱き止めて迷路にはホラはぐれ猫

夕ぐれの壁に背合わすハンプティーダンプティ

亡き人と共寝た薔薇は冬の季語

逝きて空へ吊す薔薇は乾ききる

れんげ田の記憶貼りつけ閉じる窓

感触はネオンライトに花いちもんめ

白雲に天馬を描く尻軽っ娘

寒き肛門となめらかな皮膚語る男(ひと)

暴爆の天心街ははにかめり

TKIOの草に群衆がつまずく日


●66号(1995年5月29日)

差異/大井ゆみこ                           

突然です私の顔がない鏡             

雨のこだわり知らぬ反転逆転か          

生と死と虹はその色分けにけり           

むだ死にへ彼岸花幾重も群生し          

無数に死光る今宵の街景色        

地層にも虐殺の骨重なると          

空々と死の灰真実信じます          

空白な顔の白波夕月夜

風吹かれレモンポトスは痛かりし          

白湯を手に差別はいつも逆立ちさ           

極楽へ再生サ行連続せよ            

地図芽ぶく緑の夢見は五億年         

真昼また言葉の影を売る男          

ラジオでは晩は嵐と愛捜す          

逃げなんて立ち止まろうか金木犀           

かきの木の重ね月日はあったかお手々           

最愛の記録は原っぱ赤まんま       

野菊の花の古き陰影真空律        

相槌に愛の破片の寄せ木あり         

恋ひとは夢びとなれば夏祭        


●68号(※編集作業中に見つからなかったので省かせていただく。)


●69号(1996年10月27日)

影/大井ゆみこ

黒繻子のわたし飛べない羽抜け鳥

満月が昇らず緋色地平線

かあごめかごめ腕の内側吹きぬける

このごろは明けぬ夜明の春さがし

震災の山河抱くは日暮かな

積もる雪女人仏の裸足欠け

ひとひとひと正しい道を皆垂線

花芽あり雨は真すぐ降りてくる

影向こう白きいちごの香り立つ

木々と木々愛のささやき厭きて秋