「琴座」同人となっても救仁郷由美子(大井ゆみこ)は毎号作品を発表しているわけではない。追悼作品集ではあるが、とびとびの作品しか掲載していないのはこのような理由である。また、私の手元にも「琴座」のバックナンバーがすべてあるわけではないので益々不完全ではある。しかし、いずれ救仁郷由美子作品集を豈でまとめたいと考えているので、それまでの努力として「俳句新空間」を活用したいと考えているのである。ご容赦いただきたい。
●「琴座」6年1・2月 486号
大 井 ゆみこ
夏みかん食べ頃でした兄は逝き
過去は過去にコーヒー飲む老木の椅子
からまりし銀の指輪にからすうり
青ざめた空か気候となった街
うそばっかりふった七味の色模様
●「琴座」6年3・4月 487号
大 井 ゆみこ
正面を見つめなおして寒桜
天地爆風水草振れて個体は死
四肢泥土零れては涙朝霧となる
すでに青空重金属に犯されし
日の丸や上目使いの晴れ晴れ日
●「琴座」6年5・6月 488号
大 井 ゆみこ
ほら貝と同じくらいに陽ざし浴び
愛しき手ざわり冥府の五月かな
わたくしにはよろしき朝と尾長鳴く
寝台と物語りにくるまれて休日
薔薇聖水全身にそうひとり言
●「琴座」6年7・8月 489号
大 井 ゆみこ
垂直に流るる現世死の水平線
現世の縦線死の横線と交わる日
死して天心を真空せし身体
無辺の闇夜の淵をくぐる鳥
晦日来る人生ひとつひねりましよう
●「琴座」7年3・4月 492号
大 井 ゆみこ
一本の白髪と我が陽だまりに
冬に座すひざの硬さよ青畳
嗚きガラス六差路ぐるりと日を仰ぐ
あやとりにかくれたのです幸不幸
チカチカとあの銀紙の星の過去