2020年8月28日金曜日

【連載通信】ほたる通信 Ⅲ(1)  ふけとしこ

はじめに(編集人 筑紫磐井)

  2003年ごろ、「ホタル通信」という個人雑誌を頂いている。発行人はふけとしこさん。このときはA4を何枚か綴った冊子であった。「現在130部作っていますが、面倒になったら止めるかもしれません」。ふけさん以外に招待作家の作品も並んでいた。たしか36号をもって終刊したのではないかと思う。発行期間は正味4年ぐらいだろうか。当時こうした簡易雑誌は意外に多く、島田牙城「肘」、戸恒東人「東風通信」、小西昭夫「寺村つうしん」などがあり、「肘」、「東風通信」はそれぞれ「里」、「春月」と言った雑誌に発展していった。しかしふけさんは そうした野心はなかったらしく、カラッと休刊している。
 それから十年、2012年8月から「ほたる通信Ⅱ」という葉書が届いた。発行人はふけとしこさん。作品と小文を掲載したしゃれた通信であった。今度はご自身の作品だけであったから、野心は一層薄くなったが、2019年12月88号をもって終刊した。今度は発行期間は7年。少し伸びたが、88号という末広がりでやめてしまうところがふけさんらしい。こうしたはがき通信は「ほたる通信Ⅱ」以外にも現在いろいろ届いている。
 終刊直後からふけさんにはもったいないじゃないかと何度もおすすめした挙句、今回から「ほたる通信Ⅲ」の連載を開始していただくこととなった。簡易装丁→葉書→BLOGと時代に合わせて推移するが、待望の連載登場である。

         *      *


   鳩目穴
虫除けを塗る蛇瓜を見る前に
蛇瓜のとぐろを解くところとも
盆過ぎの踏まれて起きて光る草
ゆきあひの空やデニムに鳩目穴
甌穴の上を水行く葛の花

     ・・・
 「ヒラタ」という名を意識したのは蜘蛛についての本を読んでいた時だった。〇〇ヒラタグモ、△△ヒラタグモという名が度々出てきたので、てっきり平田さんという人が発見されてその名になったのだと思い込んでしまった。それにしても多くの蜘蛛を発見されたこと……と感心したものだった。
 虻のことを調べていたら今度はヒラタアブに出会った。あらまあ! 平田さんって蜘蛛の専門家ではなかったの? それとも同姓の方? と首をひねったが何のことはない。この「ヒラタ」とは身体、特に腹部が扁平である、という意味だったのだ。何という早とちり。
そして、このヒラタアブというのは、子どもの頃の私が蜜蜂だと思い込んでいた昆虫だった。いつも花へ来ているし、蜂と虻との見分けがつかなかったということでもあった。近づいても刺されることはないと本能的に感じていたものか、この1センチ程の虫の動きが面白くてじっと見ていた。
 ヒラタアブ、これにも数種があり私がよく目にするのはホソヒラタアブのようだ。ベランダや屋上のささやかな花へもやってくる。成虫は受粉を助け、幼虫はアブラムシを食べてくれる有難い存在でもある。               

(2020・8)

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