【「BLOG俳句新空間」100号記念】特集『俳句帖5句選』その9
下坂速穂(「クンツァイト」「秀」)
恋人にするには若き白地かな
日向ぼこ昨日と同じかほ撫でて
目明しの老いて灯下に親しめる
足跡に遠く鳥ゐる秋の潮
湯気立てて死も長生も楽しからむ
岬光世(「クンツァイト」「翡翠」)
寒稽古見えぬ巌の胸を突く
遠き世の遠きへ帰る朴の花
巾着を青酸漿に濡らしけり
秋湿りライナーノーツ読み返し
葱を買ふ二人の仲をいつはらず
依光正樹(「クンツァイト」主宰)
大寺や水輪と見れば春の雪
高きまで鈴を鳴らして春岬
探梅やきらりきらりと胸の内
鬼灯や子守女が吹くかの音も
近づいて木立に鳥や水遊び
依光陽子(「クンツァイト」)
獅子殿の獅子をくぐれば芒原
物と物触れ合はずある淑気かな
眼涼し羽ばたくものを捉へては
それぞれの手の生む文字や冬めきぬ
ひろびろとかなしき虫の原に佇つ
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