2014年6月20日金曜日
【俳句作品】 平成二十六年 花鳥篇 第四
山本たくや(「船団」「ふらここ」所属)
ドライブの窓全開に薫る風
こっちだよ手をこまねいている若布
万緑の中でポキバキ鳴らす骨
致死量を超えてピーマン肉詰めに
マニュアルに沿ってリンゴ喰む白熊
川嶋ぱんだ(2013年12月末に関西俳句会「ふらここ」に入会。)
黒南風に追われて神戸港を去る
旧の宿恵みの黴とそうでない黴
横道に一本いけば蝉の声
粉チーズ夏の温室的思考
残月に軸足置いて夏渡り
弱冷車に女の髪の淋しけり
傘閉じて港が見えるねホトトギス
浅津大雅
天牛やトイレ案内板に点字
吹いても吹いても頁にしがみつく糠蚊
かはほりや絹ごし豆腐派でありぬ
新樹光裏口入学のはなし
さへずりや糺の森の土やはく
初夏の怪物映画傑作選
膨らめば国となるなり稲の花
羽村 美和子(「豈」「WA」「連衆」同人)
夏蝶湧きふと式神のひとりふたり
烏瓜の花秘密をさてどうしょう
白雨です激しいプルトニウムです
竹岡一郎(「鷹」同人)
五月雨の琴百年の柔き指
短夜の短き舌を愛しけり
玉葱を剝けば記憶の無くなりぬ
夏木 久
阿弗利加の痒いところに蚊遣香
五月雨の狙ふゴールの右の隅
紫陽花の乾けば謀反はじまれり
西村麒麟
薔薇の名を残念なほど忘れけり
濃厚な薔薇ことごとくドイツ産
赤黒く大人の薔薇でありにけり
内田麻衣子(「野の会」同人)
摘み草や悋気な猫はまるく寝る
太陽のたまご抱えてする午睡
逐電インコの遠き裏声夏野原
青物屋赤べら泳ぐサッシ裏
みづいろに燃えよ静脈いなびかり
小久保佳世子(「街」同人)
梅雨鴉こはいこはいと鳴いてゐる
ざりがにの取引眼鏡の子が泣けり
さみだれや眼鏡かけると眼が小さし
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