少年の何処を切っても草いきれ
この空の蒼さはどうだ原爆忌
たましいを集めて春の深海魚
三月十一日に繋がっている黒電話
亡き父の碁盤の沈む冬畳
夏雲に押され床屋の客となる
これらの句が句会亜流里で発表された時の、
衝撃は今でもありありと蘇る。
氏が代表の句会亜流里は、2005.11.10に、
5名から始まった。
今は、30名か。いや飲み会で合流する人と合せて、33名か。
吟行も月1回行っている。
順々に草起きて蛇運びゆく
斬られ役ずっと見ている秋の空
裏道に虎の墓あり冬サファリ
ミサイルの落下地点の桜狩
冬すみれ死にたくなったらロイヤルホスト
昔のようにブランコを大きく振れなくなった
発行所 俳句アトラスの林 誠司氏
(猛虎氏を俳句に導いた、三十年前に都内のある会社で同僚)は、
跋 天賦の才 の中に「私は彼を天才だと思うことが多々ある」と書いている。
そうも思うが、やはり、並々ならぬ隠れた努力があると思う。
それと何よりの強みは、語棄の豊富さだろう。
季語と句意と言葉がほどよく混じり合つて、読み手に情況が
手にとるように、理解できる句になっている。
秋の虹なんと真白き診断書
遺骨より白き骨壷冬の星
新涼の死亡診断書に割り印
鏡台にウィッグ遺る暮の秋
雪掻きて墓を掘り出す三回忌
ポケットに妻の骨あり春の虹
この三年で、奥様に先立たれた知人が五人もいる。
内一人は見る見る老いていって、ご本人も亡くなられた。
猛虎さんも、若くして奥様との別れ。つらいのは理解できる。
でも乗り切ってほしい。そして第2句集を目指して欲しい。
2020年10月16日金曜日
新連載【中村猛虎第一句集『紅の挽歌』を読みたい】1 中村猛虎第1句集「紅の晩歌」を読んで 原英俊(高砂市俳句協会会長 ひいらぎ同人会幹事 亜流里指導)
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