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2020年10月30日金曜日

【連載通信】ほたる通信 Ⅲ(3)  ふけとしこ

   京都島原
青北風や表格子の日に細り
雷をかたどる欄間昼の虫
煙草盆の灰に影ある秋簾
崑崙花咲かせ秋思をつのらせて
島原大門柳古る柳散る

   ・・・
 少人数で「草を知る会」というのをやっている。文字通り、草木を見てその名前を知る、というだけ単純な会である。99回目の10月例会は温泉で有名な有馬へ行った。温泉街を過ぎた所に鼓ヶ滝という滝があり、そこまで歩こうというのが今回の計画であった。歩くといっても、バスターミナルからせいぜい1キロ余り。それでもこの会のメンバーにとっては結構な距離になる。なんとなれば、草に花に木に虫に……といちいち立ち止まるからである。まさに道草散歩なのだ。アキノキリンソウやヤクシソウの黄色い花。ヨメナやシラヤマギクの可憐な花。イタドリが名残りの花を零し、ヒヨドリジョウゴやアオキの赤い実なども晩秋の彩りである。
 実を付けたカヤの木があった。「これ碁盤や将棋盤になる木よ」と言えば、たちまちに藤井棋聖の話になり、ヌルデの木に出会って、てフシ(五倍子)を見つけると、お歯黒の話になる。1つを採って割ってみると、消し炭色のもやもやしたものが飛び散る。「キャーッ」という騒ぎ。「この黒っぽいの何ですか?」「アブラムシが中で育ってたから彼らの排泄物や抜け殻」と答えれば「エーッ!」とまたまたひと騒ぎ。「これがどうやればお歯黒になるの?」「お歯黒は……」そんな調子だから1キロ余りの道が長い。滝はなかなか遠いのである。
 やっと着いた滝茶屋で休ませてもらい、茶屋の主から昔話を少し聞く。凍滝の写真もあったが、温暖化の影響もあり、今では凍ることはないとのこと。私は滝の氷柱を見たことはあるが、凍った滝は見たことがない。この先見る機会はもうないかも知れない。
 それはともかく紅葉には早かったが、大きな木々に囲まれて過ごしたとてもいい時間だった。

(2020・10)

 この春、福島県産の山菜、特にコシアブラにセシウムが多く含まれているとの記事を目にした。コシアブラはウコギ科の木でその芽はタラの芽より美味であるとして人気があり、近頃では大阪のスーパーでも売られるようになってきた。この記事を読んだ時、そりゃそうでしょ、と思ってしまった。何故なら例の原発事故以来、如何にセシウムを減らすかということに取り組む人達があり、さらに危険区域にまで入って植物を採取し、その蓄積量を調べているグループがあることを聞いていたからである。そして分析の結果、蓄積量の一番多いのがコシアブラだったというのである。木の本体にセシウムが蓄積されていれば、新芽にも当然含まれる筈だ。かつてカドミウム米と言われた米があったように……。  
 植物は例えそれが有害であるとしても、水や土壌から体内に取り込まざるを得ない。汚染土と言われる土に根を下ろせば致し方のないことである。他にナズナやギシギシなどの雑草にも多く集積しているとか。それならば、なるべく多くの草木に吸い取らせ、それを刈り取って処理すればいいわけだと思えてくる。
 が、と素人は素人なりに考える。そのセシウムを取り込んだ植物を刈り集めたとして、その後をどう処理するのだろうか、と。
 最近、公園や街路からキョウチクトウが減っている。常緑樹で鮮やかな花は花期も長く、日照りや排気ガス等にも強いことから、多く植えられていた時代もあったが、その毒性が指摘され(死亡例もあるそうだ)次第に減らされてきたものである。燃やすと煙からも有毒物質が出るから、絶対に自分で燃やしたりしないで、と書かれた物を見たこともあった。
 放射性物質となると、キョウチクトウの毒どころではない話で、これからどのように研究されるにしても、実際に浄化されるまでの道のりとは、私には想像することすらできない。
(2020・9)
 

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