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眠り 曾根 毅
十薬に忘れられたる言葉たち
何処から翳り始めし潮干狩
遠くまで流れてゆけり夜の桃
馬の毛を梳かし八十八夜かな
為す術もなく吹かれいて蛇衣
かなかなや夢見がちなる草木に
白桃の疵さながらに曝しけり
皃の無き蟷螂にして深緑
何処まで月光に透く傘の骨
秋桜がレンズに触れてならぬなり
醒めてすぐ葦の長さを確かめる
尼崎あたり鉄屑時雨れけり
凭れ合う鶏頭にして愛し合う
冬雲の広がっている眠りかな
スカートとポインセチアが無造作に
凍蝶の眠りのなかの硬さかな
沼に映る冬木いつしか夕まぐれ
雪解星ふっと目を開く胎児かな
凍蝶を見に病棟を抜け出しぬ
春近く仏と眠りいたるかな
【作者略歴】
- 曾根 毅(そね・つよし)
1974年香川県生まれ。「花曜」「光芒」を経て「LOTUS」同人。第四回芝不器男俳句新人賞受賞。現代俳句協会会員。
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