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2024年6月28日金曜日

【連載通信】ほたる通信 Ⅲ(47)  ふけとしこ

    金魚

玉虫を納めて祖母のお針箱

風騒ぐ鏡が青葉映すとき

島へ行く金魚フェリーへ案内す

甌穴へ閉じ込めらるる水も夏

床磨く老鶯のこゑ映るまで

      ・・・

 最近訪れた菖蒲園で小さな花を見つけた。庭石菖の花に混じって、それを一回り小さくしたような真白の花が星を撒いたように咲いているのだった。初めて見たのだが、とても印象的だった。

帰宅後に調べてみたら、どうやらセッカニワゼキショウ(雪花庭石菖)というらしい。帰化植物だという。

 イヌフグリにも、とても小さくて白い花をつける種がある。これはコゴメイヌフグリ(小米犬陰嚢)という。これも外来種。今、多くの場合イヌフグリといえば外来種のオオイヌノフグリを指すが、早春に咲く空色の花はとても可憐で、帰化種だからと言って憎む人はいないように思う。俳句に詠まれているのも大方はこの花ではないだろうか。

 日本古来のイヌフグリはもっと小振りの桃色に近い花を咲かせる。滅多に見かけなくなってしまったが、生える場所を2か所知っていた。   

偶然にも吟行の時に見かけて、ささやかな秘密の場所になっていたのである。

ところが、その場所が2か所とも工事により失われてしまった。どこかで生き延びていて欲しいと願っているのだが……。

セッカニワゼキショウの方はこれからどんどん増えてゆきそうな気がする。

 話は変わるが、おまけに季節外れでもあるが

  

風ふわりチューリップ丼のある食堂  赤石忍


という句がある。

 以前頂いていた写真と俳句と短文とで構成された美しい本『風猫』。これを見直していて再発見した1句である。文を読めば解るのだが、実際に「チューリップ丼」なる食べ物があるわけでは無い。……のではあるが、もしや~と検索してみた。出てきたのはチューリップ柄の器あれこれだった。

 昔、チューリップを栽培していたという人に会ったことがあった。

 花よりも球根を育てる方が仕事だったようで、そのことを色々と聞かされた。話の流れで「球根を食べたことがありますか?」と聞いてみたら、あるとの返事だった。やや認知症気味の方だったので、調理方法までは聞くことができなかったのだが。

 丁度数年間植えっぱなしのチューリップがあったので、球根を掘り出してみた。皮を剥くと白っぽくて綺麗。茹でて食べてみたけれど、特に美味しいということでもなかった(ように記憶している)。1人でちょっと食べてみただけで、家族の食卓へ出すことはしなかった。

 市販の植栽用の球根には農薬が残っているだろうから、これは迂闊に食べたりするべきではない。が、もしも調理するとなればどうする? 素揚げにする? 卵とじにして丼にする?

 春風の吹く日にこの句に登場する食堂を訪れてみたい。

「はーい、お待たせしました! チューリップ丼!」

って運ばれてきたら楽しいだろうな。

 (2024・6)