・さみしさの鮫が近寄る昼寝覚
・貌や翅を呑み込む蟻の銀河系
・丸ごと遺品のおきなわ慰霊の日
・ぐいぐいと命を伸ばす蝸牛
・息を呑む吹奏楽の蝉しぐれ
・爆心地を弾くほど泣く赤ん坊
・若夏が沁みる埋立だらけの島
・戦争の眼を綴じ込める蝶の翅
・老いる母を織り成す小夏日和
・地球を描く縄跳びの子らの虹
・虹を弾くニライカナイの甘蔗穂波
・おきなわの弦は丸ごと花ゆうな
・年の瀬を越えて行くんだ葱坊主
・しら波の子ら鬼餅寒の舌を巻く
・蠅一匹生まれる此処は我が孤島
・立春の文庫本サイズの孤独
・蛍烏賊の我らスマートフォンの海
・ういるす籠りの母の孤独と語り合う
・虹色の川になるパラソルの子ら
・抱きしめた島は丸ごと南風
・命どぅ宝が大事な私とうがらし
・みなマスクの子らの視線さくらんぼ
・性欲が明るい蔓の熱帯夜
・喜怒哀楽も刻んで苦瓜ちゃんぷるー
(小松風写 選)
写真家の小松健一(こまつ けんいち、1953年 - )氏は、写真界で名を馳せる。写真集『雲上の神々-ムスタン · ドルパ』で1999年の第2回藤本四八写真文化賞。2005年の『ヒマラヤ古寺巡礼』で日本写真協会賞年度賞など多数受賞歴がある。近作の小松健一写真集『琉球OKINAWA』(2022年5月15日刊・本の泉社)は、1998年の「琉球-OKINAWA」で第23回視点賞受賞をずっとあたため続けた情熱の結晶化された作品。その他にも私、豊里友行の好きな「石川啄木 光を追う旅」(1996年刊、碓田 のぼる氏との共著)や「宮沢賢治 修羅への旅」(1997年刊、三上 満氏との共著)でも写真家の写真による文学の影像化の真骨頂は、「写真・日本文学風土記」作品シリーズとしても情熱の持続がなされていている。
俳句では高島茂に師事「獐」同人、伊丹三樹彦、中原道夫に師事「一滴(しずく)」同人、短歌では碓田のぼる、馬場あき子に師事。(文責:豊里友行)