【俳句新空間参加の皆様への告知】

【ピックアップ】

2022年1月14日金曜日

第20回皐月句会(12月分)[速報]

投句〆切12/11 (土) 

選句〆切12/21 (火) 


(5点句以上)

9点句

スケートや老先生が風の如(西村麒麟)

【評】 いかにも軽やかな詠みようで、老先生が少年のように滑っているようすが想像されました。──青木百舌鳥

【評】 ありそうで楽しい句だと思いました。風を纏って若者の間を縫い颯爽と。スケートだから可能ですね。──小沢麻結

【評】 老先生なればこそ、比喩が生きる。──仙田洋子

【評】 痩せた老先生の軽々とした動きが見えるようです。──渕上信子


7点句

おでん鍋それとも沖の沈没船(松下カロ)

【評】 「それとも」で結ばれる事物が意外なかけ離れ方をしており、興味深い作品。──妹尾健太郎

【評】 おでん鍋と沖の沈没船をそれともで繋ぎ、あとは読み手のイメージに委ねている。まさに二物衝撃。背後に詩的物語性を感覚。──山本敏倖


6点句

予後すこし兎のしっぽ狐のしっぽ(望月士郎)

【評】上五のリアリティから中七下五のメルヘン的な言葉のあしらいが変っている。──依光正樹


妹は大きく強し南瓜切る(渕上信子)


5点句

安全と第一のあひだに十字冬の月(中山奈々)


恙なく水飲んでゐる冬の虹(田中葉月)


去年今年おほきな話する自由(佐藤りえ)

【評】 去年今年なればこそ、「おほきな話」も許される。──仙田洋子

【評】 使用している語彙(「去年今年」、「おほきな話」、「自由」)はどれも抽象的だが、そのつながりの中で、大晦日の夜にふさわしいでリアリティが生まれる。「去年今年」は、ちまちました写生や、湿っぽい情感を言わなくてもいい季語なのである。来年こそ大ぶろしきを広げて、どこまででもはばたこう。そうです。来年こそ自由に。──堀本吟


酒器の絵も我も沈めて濁り酒(内村恭子)


銀漢をぬけてこれより眞神の邦(真矢ひろみ)


(選評若干)

猛犬を少女制して冬至る 2点 松下カロ

【評】 こういう場面に出会うと、この少女を尊敬したくなる。立冬のある種のピリッとした空気管によく似あっている。──堀本吟


綿虫やぼろぼろなれど美味き店 4点 西村麒麟

【評】 貧相な店に入ろうとしたら綿虫が付きまとう、入って見たらすごくおいしいうどんなどが出てくる。そんな店は確かにある。「綿虫」と「ぼろぼろ」がうまく付いていて、かえって食通のぜいたくさの感じすら醸し出す。──堀本吟


頬ずりをしても亡骸花八手 4点 仙田洋子

【評】 亡くしたのは、近しい人か、愛玩の生物か。八ツ手の花には死の心象が重なる、と云われると慥かにそのような気がして来ます。ベニテングタケよりは清楚だけれども葱坊主よりも禍禍しい、というくらいの立ち位置の、面妖な趣を具える花ですね。──平野山斗士


ジャンケンの順より沸す湯婆かな 1点 松代忠博

【評】 寒かった学生寮を思い出しました。──渕上信子


十二月象より猫のやうなこゑ 4点 中山奈々

【評】 聞いてみたい。寒くなると出す声なのか。──仙田洋子


巨大観音わがままな顔冬の空 2点 岸本尚毅

【評】 「わがままな顔」というのが面白い。──渕上信子


霜晴の手紙を待つてゐる時間 4点 依光正樹

【評】 なんてキラキラな時間──依光陽子


蕪村忌の写真に子規と虚碧かな 2点 渕上信子

【評】 近代俳句の黎明期、正岡子規は芭蕉ではなく蕪村を評価した。

蕪村忌に、子規とその弟子虚子碧悟桐の三巨人の写真を置いたところ、意図が分かりすぎるところが大胆である、と感心した。固有名詞がこれだけ並んでいても押しつけがましくないのは、当たり前すぎてかえって無意味な説明であることと、むしろ意味を離れて、音韻の移りから生じるリズムが軽快だからだろう。K音のつながり、S音のアクセント、そん(Sonー村)、しん(Sin-真)、し(Si-子)と、SとN音の流れ方。これらを上手く配列している。誰だろう?この句の作者。わかる気もするが。──堀本吟


天金の書を閉づ水鳥眠る頃 3点 渡部有紀子

【評】 読んでいる時は、本の小口に金箔が塗ってあることを忘れているが、閉じると気が付く。羽を閉じて眠る水鳥もまた、羽ばたいている時は、その羽の模様や艶めきを忘れている。この両者の映像の取り合わせが美しいと思った。──篠崎央子


父の忌のゆりかもめの眼怖ろしく 4点 依光正樹

【評】 凄みのある句。──仙田洋子

【評】 あの無機質な眼差しは心底おそろしい 父の忌と相性よし ──真矢ひろみ

 

空色の積み木放さぬ枯野かな 3点 田中葉月

【評】 子供が積み木を握りしめて離さない。枯れ一色の野原のとおくに見えているの小さな空の欠片のような色をしている。この二つの空色の取り合わせで、冬の詩情をあら和下、自然の美しい冷たいひろがり、そして暖かい交感の一場面。──堀本吟


鍋に詰め白菜豚肉花の如 1点 小沢麻結

【評】 比喩が素晴らしい。──仙田洋子


終の恋見たなとすさぶ雪女郎 2点 堀本吟

【評】 雪女郎の様々な小説・伝説を踏まえての巧みな完全創作物語。雪女郎に終の恋などない。春となればその冬のことなど忘れ去り、次の冬は新しい恋が始まる。──筑紫磐井


一徹の父も和らぐ寒灸 1点 松代忠博

【評】 激しやすい星一徹の父もまた激しやすい人だったのだろうか。そんな人さえ和らぐ寒やいとは、痛むところを持つ父が弱みを見せる一時なのだろう。──佐藤りえ


駝鳥舎と冬木越しなる直売所 1点 青木百舌鳥

【評】 駝鳥の玉子を売っているかもしれない。──中山奈々

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