投句〆切3/11 (木)
選句〆切3/21 (日)
(5点句以上)
12点句
弔問のいつまでもいつまでも蝶(中山奈々)
【評】 「蝶」が泣かせる。──仙田洋子
【評】 長寿を全うした人の葬儀と思いました。作者の視点は屋内から外に向かっていて、眩しいなかにときおり蝶の閃きが見える。──青木百舌鳥
【評】 「俳句新空間」「豈」の編集をしていると、いつまでもいつまでも北川美々さんへの追悼文が届く。──筑紫磐井
【評】 北川美美さんへの思いから作られた俳句でしょうか。「いつまでもいつまでも蝶」というのが切なくて美しいです。──水岩瞳
11点句
チューリップ影を育ててゐたりけり(田中葉月)
【評】 チューリップの花が開いてくると、影も変化する。のだが、実際はそんなにくっきりと現れない。土の下のしっかりした球根とその鮮やか色の花とを結ぶ影の育ちも楽しい。──中山奈々
【評】 チューリップは「喜びだけを持っている」花だから明るさこそ相応しく、影は似合わないはず。そういう通念を見事に引っくり返したところが痛快で面白い。──仲寒蟬
8点句
ふらここや天より取つて来し楽譜(仲寒蟬)
【評】 聴いてみたいその調──妹尾健太郎
【評】 モーツァルト?ここは天か!ソラとかミソラとかしてしまいそうだが…?──夏木久
6点句
大波の記憶目刺にがらんどう(真矢ひろみ)
【評】 大波の、津波の、フクシマの記憶が消えない。消してはならない。串で刺した目刺の眼か、食べた時の腸の触感か、がらんどうを感受した。大波の記憶と共に。──山本敏倖
【評】 復興半ば、ぽっかり空いたところには何を詰めればいいのだろうか──中村猛虎
【評】 東日本大震災の津波のことであろう。目刺は、焼くと内臓が流れ出て腹の部分が空洞になることがある。目刺のがらんどうが、震災より10年の空白のよう。──篠崎央子
三月十一日朝刊の濡れている(中村猛虎)
【評】 新聞紙が濡れているだけで、この苦渋‼──夏木久
牛蛙びたんびたんと追つて来し(西村麒麟)
【評】 「びたんびたん」に実感あり。私も追いかけられたんですよ。怖かった!──渕上信子
5点句
死者の貌日ごとに変はる花の雨(仙田洋子)
【評】 コロナウイルスの終息が見えない中亡くなる人が増えています。死に目に家族も会えない状況です。悲しい世の中です。──松代忠博
胸深く吸へば痛みや沈丁花(小沢麻結)
(選評若干)
みごろしもみなごろしにも 空襲忌 3点 筑紫磐井
【評】 すごくインパクトがあって惹かれるのですが、「にも」でいいのかなぁとやや疑問。──仙田洋子
建築は上へ上へとよなぐもり 3点 堀本吟
【評】 バベルの塔のような、てっぺんが見えないほど大きなものを建てているような感興がありました。──佐藤りえ
イヤホンの落ちてゐる椅子春の雪 4点 依光陽子
【評】 座ろうと引いた椅子にイヤホンがある。座っていた誰かが落としていったもの。春の雪に閉ざされた一室、例えば図書館やカフェに居る作者が見えて来る。──小沢麻結
花粉症と印すマスクに薄笑い 1点 夏木久
【評】 「薄笑い」を、疑い深い他者の表情とみるか?、弁解する自分の心の現れとして書いているか?どちらとも取れる。この季節の困った症状にたいして、信じてくださいよ、と言わねばならないのばかばかしい。それでも、信じちゃいないよ、あんたは危険だよ、となおも疑ってくる意地悪な「薄笑い」でもある。端的な時事性と婉曲な心象の絡みにここまで踏み込んであらわしたことを評価します。──堀本吟
野を撫づる指のあひだの菫かな 4点 中山奈々
【評】 〈撫づる〉の解釈如何ですが、ちょうど猫が伸びをするように、春野の地べたに坐るか膝を突くかして十指を突き進ませてゆく動作と解します。無造作に撫でたらおやおや菫だというのではない、薙ぎ倒したのではなくって、予め菫は見えておりそこを目掛けて、でしょう。てのひら全体で春を堪能しようという、ええと逆ラスコーリニコフとでも申すべきか、その心地良さで頂戴します。──平野山斗士
卒業のかなはぬ生徒かかへゐて 2点 前北かおる
【評】 「かかへゐて」に言葉にならない思いが込められていて、読むほどに強く刺さってくる。──依光陽子
剪定の終はれば庭師黙ゆるむ 1点 松代忠博
【評】 そうですね。お茶出して、短いおしゃべりが楽しいです。──渕上信子
たびたび選句が遅れまして申し訳ございません。
返信削除前北かおる選
28 牛蛙びたんびたんと追つて来し
「びたんびたん」という音によって、牛蛙の重量感がよく表現されていると思いました。
16 寺町に混み合ふ耳鼻科猫柳
38 匿名で届く手紙やヒヤシンス
45 三方に奇岩絶壁桃の村
55 円楽の顎割れてゐる日永かな
前北さま
返信削除選句、選評ありがとうございます。
今後ともよろしくお願いいたします。(管理人)